2013年5月30日木曜日

「Midnight Special 1973」カルメン



イギリスでレコードデビューしましたが、メンバーはアメリカ出身というバンドCarmenが1973年10月に米NBCテレビの「Midnight Special」に出演した際の映像。デヴィッド・ボウイ(David Bowie)がメインで出演した時のゲストとして登場し、この時がテレビ初出演でした。

曲は1st「Fandangos in Space」から「Bulerias」と「Bullfight」の2曲

[members]
David Allen(リード・ボーカル、ギター)
Angela Allen(リード&バッキング・ボーカル、キーボード、フラメンコ・ダンス)
Roberto Amaral(リード&バッキング・ボーカル、ビブラフォン、カスタネット、フラメンコ・ダンス)
John Glascock(ベース、バッキング・ボーカル)
Paul Fenton(ドラムス、パーカッション)
 
キーボードやカスタネットなど、メンバーが演奏していない音がふんだんに使われていますので、ボーカル以外はテープによる演奏かもしれません(カラオケ状態)が、熱いパッションは十分に伝わってきますね。

アルバムでも特にこの冒頭曲はスリリングな名曲ですが、パルマ(手拍子)やサパテアード(足拍子)の音だけでなく、実際にフラメンコ舞踏として目の前で繰り広げられると、熱気もさらに高まります。

デヴィッド・アレンの粘っこい歌にアンジェラの女性としては太い声もかなり個性的。そしてフロント4人がボーカルを取るという迫力は、実は踊りと同じくらいフラメンコ色(エスニック色)を醸し出しているのかもしれません。洗練された歌声とはちょっと違う、荒っぽいけれど野趣あふれるハーモニーは、このバンドの大きな魅力でしょう。
 


2013年5月29日水曜日

「Interview & Live」ピエール・モーランズ・ゴング



Gongから創始者のDavid AllenやギタリストのSteve Hillageが脱退し、Pierre Poerlen's Gong名義で再出発した際の1979年の映像で、新しいバンド・リーダーであるピエールへのインタビューと、バンドのライヴの様子を見ることができます。

曲はアルバム「Downwind」(1979)から「Downwind」。

Pierre Moerlen(ドラムス、パーカッション、ビブラフォン)
Benoit  Moerlen(パーカッション、マリンバ)
Bon Lozaga(ギター)
Hansford Rowe(ベース)
※キーボード奏者は不明

最初に、Meorlenはフランス標準語読みだと「モーラン/モワラン」が表記として近いようですが、アルザス地方出身の彼はこれを「メルリン」と読むと言った、という話もあるようです。一応ここでは「モーラン」とします。

ピエールがビブラフォンでメイン・メロディーを奏で続けるためでしょうか、ここでは弟のブノワがドラムスを担当し、後半はマリンバに移行してピエールと細やかなアンサンブルを繰り広げ、その後にもう1つのドラムセットに移動します。ドラムセットも2つ用意されているので、二人が自由にドラムスを担当できるようになっていたのでしょう。

切れの良いジャズ・ロックですが、メイン楽器がビブラフォン&マリンバという点が独特ですね。ステージ上でもセンターに陣取っています。

延々と続く打楽器の美しい響きにはミニマル・ミュージック的な雰囲気もありますが、リズムがグルーヴしているので現代音楽的なシュールさはありません。ボン・ロザガの厚みのあるギターの音も、繊細なマレット楽器アンサンブルにうまく溶込み、良いアクセントになっています。この不思議なアンサンブル、派手さはないのに何ともカッコイイのです。

このわずかな映像を見ただけでも、非常に個性的なバンド編成による他に類を見ないサウンドであることがわかります。David Allen主導のGong期の映像はまだ多少残っているのですが、このPierre Poerlen's Gong映像は激レアと言えるでしょう。
 


2013年5月25日土曜日

「In a Talk Show 1974」サムラ・ママス・マンナ



スウェーデンのバンドSamla Mammas Mannaが、1974年にTV番組に出演した際のスタジオライヴ映像。インタビューが英語で行なわれているのでイギリスの番組ではないかと思われます。

3rdアルバム「Klossa Knapitatet」(1974)発表の年で、インタビューの中でもこのスウェーデン語のアルバムタイトル「Klossa Knapitatet」を、インタビュアー(恐らくイギリス人)に発音させる場面が出てきます。

[members]
Coste Apetrea(ギター、ボーカル)
Hasse Bruniusson(ドラムス、ボーカル)
Lasse Hollmer(キーボード、ボーカル、ヨーデル)
Lasse Krantz(ベース、ボーカル)

冒頭で聴かれるのがアルバム「Klossa Knapitatet」収録の「Ingenting」のエンディング部分ですが、その後の展開はどのアルバムのどの曲なのか、あるいはインプロヴィゼーションなのかは不明です(申し訳ありません)。

まず気になるのが奇声かと思うような奇妙なボーカル、そしてコミックバンドのような動きと間でしょうか。でもめまぐるしく変化するテンポやリズムと、驚異的なアンサンブルを目の当たりにするうちに、笑って入られない“狂気”のようなものさえ感じられるようになります。こうして“コミカル”から“アバンギャルド”の間を揺れ動く中、最後には異形のSamlaワールドにどっぷりとハマってしまうのです。

ジャズ、トラッドに、高速変拍子のダンスミュージックなどがごった煮のように取込まれたサウンドと、そこで展開される緊張と弛緩(と言うか、脱力)の落差にアタマが痺れますね。

実に個性的なバンドの貴重な生演奏記録ですが、全体の音量が小さめなのと、何よりも最後の部分にかなりノイズが入っているのがとても残念。でも間違いなく、動くサムラを見ることができる超お宝映像と言えましょう。

余談ですが、第5作目からバンド名がSamla Mammas MannaからZamla Mammaz Mannaに変わっています。

2013年5月23日木曜日

「ČST 1979」フェルマータ



チェコのバンドFermataが1979年に国営放送Československá televize(現在のČeská televize)のチャンネル2の番組に出演した際のものと思われる映像。曲は傑作アルバム「Dunajská Legenda」(1980)からインスト曲「Wlkina」。

[members] 
Tomas Berka(キーボード、ボーカル)
Frantisek Griglak(ギター、キーボード、ボーカル)
Fedor Freso(ベース、ボーカル)
Karol Olah(ドラムス、パーカッション)

乗りの良いファンキーな感じの曲ですが、ラテン風な明るさがない愚直な感じが東欧ジャズロックの香りを漂わせていますね。フランチセック・グリグラックのギターとトマーシ・ベルカのキーボードがユニゾンやソロで曲を引っ張っていきますが、意外と重いリズム・セクション、特に突進力のあるドラムスも魅力です。

良く見ると実は当て振りで、音はアルバムのものを使っているようです。そのため曲の始まりやキーボード・ソロなどで音と動きがズレます。しかしライヴでもスタジオ・アルバムに比べて何の遜色も無い演奏が可能な実力派ですから、ぜひ生の音声も含めた生ライヴ映像にして欲しかったものです。
 

2013年5月22日水曜日

「Guildford Civic Hall 1973」キャメル(Camel)


イギリスのバンドCamelが1973年に、イングランド南東部のサリー州にあるGuildford Civic Hallで行なったステージのライヴ映像。曲は1stアルバム「Camel」(1973)からインスト曲「Arubaluba」。

[members]
Andrew Latimer(ギター、ボーカル)
Peter Bardens(キーボード、ボーカル)
Andy Ward(ドラムス、パーカッション)
Doug Ferguson(ベース、ボーカル)

Camelの最初期の映像と思われ、とても貴重なステージの様子を見ることができます。惜しむらくは音がアルバムのものを使用していること。当て振り(音に合わせて演奏する振りをする)ではなく、実際のライヴ映像にアルバムの音を被せたものだと思われます。オーディオデータがない、あるいは音質が悪過ぎるなどの理由で差し替えられたのかもしれません。

いずれにしてもオリジナル・メンバーの4人が、初々しくも実に自信に満ちた様子で演奏しているのがわかります。演奏はハードなのに音はマイルドというCamelサウンドにも、この飾らないけれど逆にまた悪ぶるわけでもない雰囲気がマッチしてますね。

派手なパフォーマンスのないバンドだけに、上半身はだかでドラムスを叩きまくるアンディー・ワードが、ライヴでは視覚的に大きな存在だったこともわかります。

2013年5月16日木曜日

「Beat Club 1972」グル・グル (Guru Guru)



ドイツのバンドGuru Guruが、1972年にドイツのTV番組「Beat Club」に出演した際のスタジオ・ライヴ映像。曲は傑作3rd「Känguru」(1972)から「Oxymoron」。

[members]
Mani Neumeier(ドラムス、ボーカル)
Ax Genrich(ギター、ボーカル)
Uli Trepte(ベース)

フリー・ジャズで培われたテクニックと即興性をロックに持ち込んで、サイケデリック・サウンドの影響も受けたバンドだけに、技術的にはとても高いのにダウナーなどろどろ感があるという不思議なサウンドです。

ドラマーのマニ・ノイマイヤーの多彩なドラミングと、怪しげな雰囲気が良いですね。アックス・ゲンリッヒのギターも脱力系の音から始まり、後半はメロディアスで緊張感のあるプレイにチェンジします。と思ったら彼のボーカルにまた脱力。歌い方にも歌詞にも…。

 Yesterday, I took a trip

 I felt so speedy, I felt so sick
 I really got no stoned

 昨日、トリップしてみたんだ

 スゲェぶっ飛んで、スゲェ気持ち悪かった
 ぜんぜんハイになんかなれなかったぜ 
 

2013年5月13日月曜日

「Ahora TVE 1975」フシオーン



スペインのバンドFusioonがスペインの国営放送局TVEの番組「TVE Ahora」に出演した際の1975年のスタジオ・ライヴ映像。

曲は代表作&最終作である3rd「Minorisa」 (1975)から「Minorisa」。

[members]
Santi Arisa(ドラムス、パーカッション)
Jordi Camp(ベース)
Marti Brunet(ギター)
Manel Camp(キーボード)

スペインのバンドですが、“アンダルシアン・ロック”と呼ばれるフラメンコ色の濃いバンドたちとは一線を画すサウンドが特徴のFusioon。

ジャズの素養を感じさせるサンティの丁寧なドラミング、確かなテクニックを披露するキーボードのマネールなど、アンサンブルは堅実。しかしテクニックや勢いで聴かせるのではなく、曲はかなり構築されたものです。

サウンド的にもクラシックやジャズを感じさせながら、比較的分かりやすいメロディーなのに決して名前のような“フュージョン”にはならなりません。むしろ実験的な香りが漂います。

この一筋縄ではいかない感じがFusioonらしいと言えましょう。メンバーも非常に学究的な感じがしますね(コメントの内容が知りたいところです)。

2013年5月12日日曜日

「Live @ Rockpalast 2004」パートス



スウェーデンのメランコリック・ポストロック/プログレッシヴロック・バンドPaatosが、ドイツの音楽番組「Rockpalast」に出演した際のライヴ映像。曲は傑作1st「Timeloss」から「Hypnotique」。

2ndアルバム「Kallocain」(2004)を発表した頃のステージで、この時の映像は「Live in Rockpalast DVD」として発売されました。このDVDはすでに廃盤ですが、収録された9曲のうち4曲は、「Kallocain」特別盤のボーナスDVDトラックで見ることができます。

 [members]
Petronella Nettermalm(リード・ボーカル、チェロ)
Huxflux Nettermalm(ドラムス)
Stefan Dimle(ベース)
Peter Nylander(ギター)
Johan Wallen(ピアノ、メロトロン)


ペトロネラ嬢の線の細いボーカルがメランコリックなメロディーを歌い、静かにメロトロンがバックで鳴り響くという幽玄なサウンド。なのですが、ムードだけに頼ったバンドではなく、ジャズの影響を強く感じさせる各メンバーのプレイが素晴らしいですね。

特にホークスフルックスのドラミングは驚異的です。叩き過ぎることなく全体を盛り上げ、ブラシも使った多彩な表現に、絶妙な強弱と安定したリズム。ベースと一体となったリズム・セクションだけで十分に曲を引っ張っていきます。そのため繊細なギターや冷たいメロトロン(サンプリング)サウンドに奥行きが出てくるのでしょう。

終盤のドラマチックな盛り上がりも見事です。

「Jazz Land 1971」ゴング



Soft Machineのフランス・ツアーからの帰国の際に、ビザが切れて不法滞在状態だったためにイギリスへの入国を拒否されたデイヴィッド・アレンが、そのままフランスに残って結成したグループがGong。

デイヴィッド自身はオーストラリア人ですが、Soft Machineの一員として活動していたこともあって、Gongはイギリスのバンド、イギリス/フランス混交バンド、あるいはフランスのバンドと位置づけられることもあるようです。

そのGongが1971年にフランスのTV番組「Jazz Land」に出演した際のスタジオライヴ映像。曲は「Dreaming It」。

[members]
Daevid Allen(ボーカル、ギター)
Gilli Smyth(ボーカル)
Didier Malherbe(サックス)
Christian Tritsch(ベース)
Rachid Houari(ドラムス)
Daniel Laloux(フレンチ・ホルン、パーカッション)
Dieter Gewissler(バイオリン)

1stアルバム「Magic Brother」(1970)のメンバー、デイヴィッド、ジリ、ディディエの3人に、その1stにゲスト参加していたメンバーなどを加えた7人編成。

銅鑼の音から始まりジリのスペース・ウィスパー、デイヴィッドの語りのようなボーカルと続き、その後はG#とGbを反復し続けるベースラインに乗せて、フリーフォームな演奏が続きます。

サックス、フレンチ・ホルン、バイオリンが自由に音を出しているのに、ベース音がオン気味で、残りの楽器がオフ気味なため、混沌としていながらタイトル通りドリーミーでスペイシーですね。ジリの揺れ動くウィスパリング・ボイスが妖しくてゾクゾクします。

人を食ったような脱力感やユーモア、あるいはジャズ・ロック的なキレのあるアンサンブルなどはまだ伺えませんが、このコズミック感覚はすでにGongと言えましょう。

ヒッピー文化、サイケデリック・ムーヴメントなどを体現しつつ、ありそうでない独自のサウンドを作り上げたGong最初期の貴重な映像です。

2013年5月8日水曜日

「POP2 Live Bataclan 1973」エスペラント



バイオリン×2、ヴィオラ、チェロという弦楽ユニットを擁する多国籍バンドEsperantoが、フランスのTV番組「POP2」で取り上げられた時の映像。パリのバタクラン(Bataclan)劇場でのステージの模様が収められています。

リーダーはベルギー人でバイオリン・作曲担当のレイモンド・ヴィンセント。

[members]
Raymond Vincent(1st バイオリン)
Godfrey Slamon(2nd バイオリン)
Tony Harris(ヴィオラ、サックス)
Timothy Kraemer(チェロ、ピアノ)

Janice Slater(ボーカル)
Bridget Lokelani Dudoit(ボーカル、アコースティック・ギター)
Glenn Shorrock(ボーカル、ギター)
Joy Yates(ボーカル、フルート)
 
Brian Holloway(ギター、ピアノ)
Gino Malisan(ベース、フルート)
Bruno Libert(キーボード)
Tony Malisan(ドラムス)
 

※ 映像からは11人のように思えますが、メンバーが正確に確認出来ないので、1stアルバムのクレジット・メンバーを挙げてあります
 
[setlist]
1. On Down the Road
2. Busy Doing Nothing 
 
デビューアルバム「Rock Orchestra」(1973)発表時のライヴで、この時期は特に大所帯だったようです。弦楽カルテットとボーカル・グループとロックバンドの3つが合体したような、アルバムタイトル通りロック・オーケストラ的な編成ですが、出てくる音は基本的にソウルフルなボーカルを主体としたファンク・ミュージックです。

クラシカルなインストゥルメンタル曲を中心に据え、よりシリアスで実験的な作品に変化した2ndからはちょっと想像しにくいサウンドですが、例えば同時期にEarth, Wind & Fireのようなバンドが登場していることを考えると、当初このEsperantoは新しいファンク・ミュージックを模索していた、それも敢えてクラシカルな弦楽器をぶつけるという斬新な試みをしていたバンドだったと言えるかもしれません。

正直なところまだアイデア先行という感じで、弦楽器も活かされているとは言い難い気がしますが、でもこの雑然とした中にうずまくパワーみたいなものは、特にライヴではかなりのインパクとがあったのではないかと思われます。



「Promotional Video 1979」新月



日本のバンド新月がデビューアルバム「新月」の発表に合わせて作ったプロモーション・ビデオ。曲は代表曲「鬼」。当時アルバム裏ジャケットにある写真が、このビデオ撮影時のものであったことがわかります。

[members]
北山真(ボーカル)
津田治彦(ギター)
高橋直哉(ドラムス)
花本彰(キーボード)
鈴木清生(ベース)

<support musician>
小久保隆(キーボード)

アルバムのプロモーション用ということもあって、音はアルバム収録のものを使った当て振り&口パクによる“ライヴ”映像だと思われます。それでも当時ライヴの凄さから脚光を浴びるようになった実力派であり、デビュー時には三面マルチスクリーンを使用するなど、凝った演出も大きな魅力だったバンドなので、こうした映像はとても貴重だと言えるでしょう。

サウンド的には、演劇的要素の強い北山のボーカルや、細やかなアルペジとに艶やかなロングトーンが印象的な津田のギターなど、Genesisの影響が強く感じられはしますが、醸し出される雰囲気や歌詞、メロディーなどに日本的なオリジナリティが強く感じられますね。

映像情報には特に記されてはいませんが、アルバム制作とデビュー・コンサートのサポート・キーボードは小久保隆だったようなので、この映像に映っているのも小久保隆だと思われます。彼は当時RING〜バッハ・レヴォリューションで精力的に活動していた人物です。

2013年5月6日月曜日

「Live in Warsaw 1979」SBB



ポーランドのテクニカル・シンフォ・バンドSBBが、1979年10月29日にポーランドのワルシャワで開催されたJazz Jamboree '79に出演した際のステージ映像。曲は「Follow My Dream」(1978)の組曲「Going Away」。

[members]
Jozef Skrzek(キーボード、ボーカル)
Antymos Apostolis(ギター、ブズーキ、パーカッション)
Jerzy Piotrowski(ドラムス、パーカッション)
Slawomir Piwowar(ギター)
 
 ワールド・マーケットを意識してボーカルが英語になった名作「Welcome」(1979)を発表した頃にあたり、このステージではヨゼフ、アンティモス、ヤージェの不動の三人に、スラヴァーミルが加わり一時的に四人編成&ツイン・ギターになっています。

フュージョン的要素も垣間見せながら、テクニカルでスリリングなインタープレイと、多彩なキーボードによるシンフォニックさが融合された安定感あるプレイが堪能出来ます。ポーランド語によるのびやかなボーカルも魅力。

サポート的に加わっているスラヴァーミルはギターに徹していて、ベースパートは相変わらずヨゼフの左手が担当しているという変則的な編成ですが、不自由さのカケラも感じさせないタイトなアンサンブルは素晴らしいの一言。ブズーキなども出てきて、引きの美しさにも東欧的な世界を垣間見ることが出来ます。

なおSBBとは、もともとは〝Silesian Blues Band〟、後に〝Szukaj, Burz, Buduj 〟(英語で言うと"Search, Break up, Build")の頭文字とのこと。「エス、ベ、ベ」と発音するようです。

当日のセットリストは以下の通り。

[setlist]
1. Moja Ziemio Wyśniona - Wish
2. Ze Słowem Biegnę Do Ciebie
3. Szczęśliwi Z Miasta N.
4. Going Away
  i Freedom With Us
  ii 3rd Reanimation
  iii Going Away

  iv (Zywiec) Mountain Melody
5. Loneliness - Theme
6. Improvisation

2013年5月5日日曜日

「Live in Japan 1989」アトール



フランスのシンフォ・バンドAtollは1972年結成され、高水準なアルバムを4枚を残し1981年に解散します。しかし1989年に新作「L'Ocean」(1989)を発表し再結成します。この時奇跡の来日&全国ツアー(大阪、川崎、渋谷、札幌)を行なった際の東京公演でのライヴ映像です。

曲は傑作3rdアルバム「Tertio」(1975)から「Tunnel Part II」。

[members]
Paoul Leininger(ボーカル)
Christian Beya(ギター)
Jean-Pierre Klares(ベース)
Gilles Bonnabaud(ドラムス)
Nathalie Gesher(キーボード)

この再結成バンドでは、1970年代に傑作群を発表していたメンバーはギターのクリスチャン・ベアのみ。クリスチャン以外のメンバーが当時のメンバーと比較してしまうとどうしても個性や力量の面でもの足りず、さらにサウンドメイキングとしても音が薄く深みがないため、クリスチャン・ベアのギターばかりが目立っています。
 
時代的なものやバンドのコンセプト的なものの違いもあるとは思いますが、アンドレ・バウザー(Andre Balzer)の力強い歌声に比べ、パウル・レナジーのボーカルも声や表現があっさりしています。もっともボーカリストとしてアンドレが凄すぎるんですが。
 
しかしその孤軍奮闘のクリスチャン・ベアのギターが良いのです。実に良い音で流麗に弾きまくっています。特にこの「Tunnel Part II」ではドライヴするギターでグイグイと曲を盛り上げていきます。

これは当時市販されたライヴ・ビデオの映像ですが、プロ・ショットと言うには残念なレベルです。しかし70年代の彼らの映像が(今のところ)残されていないようなので、動くクリスチャン・ベアという点からも、今となってはとても貴重な記録と言えるでしょう。
 





2013年5月4日土曜日

「Pop Rock 1978」トリアンヴィラート



ドイツ(当時は西ドイツ)のバンドTriumvirat(この時期は正式にはNew Triumvirat)が、ドイツの公共放送ZDF(第2ドイツテレビ)の番組「Pop Rock」に出演した1978年の映像。曲は「Pompeii」(1977)からインストゥルメンタルの「Dance on the Volcano」。

[members]
Jürgen Fritz(キーボード)
Curt Cress(ドラムス、パーカッション)
Dieter Petereit(ベース)

Triumviratはキーボード奏者のハンス・ユルゲン・フリッツが中心となって1969年に結成されたキーボード・トリオで、EL&Pの影響が随所に感じらつつも、端正なキーボードプレイとポップなメロディーを活かしたサウンドを特徴とし、アルバムを4枚発表。ドイツでの人気を不動のものにします。

第5作目となる「Pompeii」を制作するにあたって大幅なメンバー・チェンジがあり、結局このアルバムはフリッツのソロ・プロジェクトのようなかたちで、彼以外のメンバーは皆ゲスト扱いとなりました。そしてバンド名もNew Triumviratとなります。

しかしソロ・プロジェクト扱いとは言えフリッツの、テクニックに過度に走らないメロディアスなキーボード・プレイを中心とした、バランスの取れたバンドサウンドは、紛れもなくTriumviratのもの。 このライヴはそんな時期に、ボーカルのバリー・パーマー(Barry Palmer)抜きでインスト曲を披露したものです。ただし惜しむらくはアルバム曲を使った当て振りだと思われます。

このアルバム「Pompeii」からはラスト曲「Hymn」がシングルヒットし、逆にバリー・パーマーがフロントに立つポップ・バンドのようになった映像も残されていますが、本来の“キーボード・トリオ” 的な演奏を記録した映像はレアだと言えるでしょう。

フリッツの奏でるムーグのメロディーが印象的で、それをカート・クレスが非常にタイトなドラミングで支えているので、音に厚みはないのにとても安定感のある見事なアンサンブルになっていますね。
 

2013年5月3日金曜日

「Rai 1973」オザンナ



イタリアのヘヴィー・シンフォ・バンドOsannaが、イタリア国営放送Raiの番組に出演したTV映像。曲は1st「L'uomo」から「Non Sei Vissuto Mai」。1973年とビデオの概要には記されていますので、2nd「Milano Calibro 9」(1972)発表後の姿ということになります。

Elio D'anna(フルート、テナー&バリトン・サックス)
Lino Vairett(ボーカル、キーボード)
Danilo Rusici (ギター)
Lello Brandi(ベース)
Massimo Guarino(ドラムス)

ギターはダニーロ・ルフティチ一人しか弾いていないのに、途中のギターソロの場面でも冒頭から続くギター・リフの音が途切れず鳴っているのでアルバムと聴き比べたところ、アルバム収録の同曲の、ラストのアコースティック・パートをカットしたものを使った職人的に上手い当て振り&口パクだと思われます。


しかし生演奏ではないにしても、醸し出す雰囲気の妖しさやオドロオドロシさは十分伝わってきます。音もいかにも70年代初頭を思わせる荒々しいハード・ロック。ファズ・ギターが良い味を出しています。


リノ・ヴァイレッティのボーカルは声質も良く声量もあり、見た目の印象とは異なり名カンタトゥーレのような“聴かせる”魅力がありますね。さらにエリオ・ダーナのフルートもイフェクトをかけて不気味な効果を加えてはいますが、テクニック的にも確かな演奏。こうした要素がOsannaに独特な美しさと叙情をもたらしていると言えるでしょう。


その妖しく暗く美しく激しい世界は、メロトロンの導入によってさらに劇的な展開を見せ、傑作「Palepoli」(1973)として結実するのでありました


2013年5月2日木曜日

「Live in Rome 1972」バンコ・デル・ムトゥオ・ソッコルソ(Banco del Mutuo Soccorso)



イタリアのバンドBanco del Mutuo Soccorsoが、1972年にローマで行なわれた“Festival Avanguardia e Nuove Tendenze(前衛と新しい潮流の音楽の祭典)”に参加した際のライヴ映像。イタリア国営放送Raiのテレビ映像。

「Banco Del Mutuo Soccorso」(1972)でアルバム・デビューした頃にあたり、曲もこの1stアルバムからで名曲「R.I.P(requiescat in pace:ラテン語で「安らかに眠れ」の意)」です。

[members]
Vittorio Nocenzi(オルガン、シンセサイザー、クラリネット、ボーカル)
Gianni Nocenzi(ピアノ、フルート、ボーカル)
Marcello Todaro(ギター、ボーカル)
Renato D'Angelo(ベース)
Pierluigi Calderoni(ドラムス)
Francesco Di Giacomo(リード・ボーカル)

ボーカルのジャコモをセンターに、ノチェンツィ兄弟がシメトリーに向き合うセッティング。二人のキーボード奏者がサウンドの核になっていることが伺えます。特にジャンニ・ノチェンツィのピアノが素晴らしく、生ピアノが活躍するハードロックという特異なサウンドを作り上げています。

そしてジャコモのボーカルも朗々と歌い上げるカンツォーネ・タイプ。決して声量や音域の面で突出している訳ではありませんが、お伽噺にでも出てきそうなその風貌と、その風貌には似合わない甘い声質で、これまたハードロックなサウンドには似つかわしくない個性を醸し出しています。

演奏の素晴らしさに反して、映像的にも音声的にもちょっと厳しい内容なところが残念ではありますが、逆にこの荒さが当時の熱気溢れるコンサートの貴重な記録であることを感じさせてくれます。