2015年11月26日木曜日

「Live in Knebworth 1980」マイク・オールドフィールド(Mike Oldfield)


イギリスのミュージシャンであるMike Oldfieldが、1980年6月にThe Beach BoysやSantanaなどとともにThe Knebworth Park Festivalに参加した際のステージ映像。「The Essential Mike Oldfield」というタイトルで同年にLaserDiscとVHSでリリースされました。
 
 
[members]
Mike Oldfield(ギター)

Nico Ramsden(ギター)
Bimbo Acock(フルート、サックス)
Tim Cross (キーボード)
Mike Frye (ドラムス、パーカッション)

Pierre Moerlen(ドラムス)
Benoit Moerlen(ドラムス、パーカッション)
Hansford Rowe(ベース)
Pete Lemer(キーボード)
  
Maggie Reilly(ボーカル)
Wendy Roberts (ボーカル)

[setlist]
1. "Guilty"
2. "Tubular Bells part 1"
3. "Tubular Bells part 2" (including "The Sailor's Hornpipe")
4. "Ommadawn part 1"
 
 
演奏曲は4曲ですが、インタビューが各曲の前に挿入されています。
"Guilty"は1979年に発表されたシングル曲、"Tubular Bells"は言わずと知れた1973年の大傑作デビュー・アルバム。そして"Ommadawn part 1"はやはり大傑作である1975年の3rd「Ommadawn」から。
  
何より大きな特徴は、初期の繊細で内向的な曲が、驚異的なライヴ・アンサンブルにより、ロック・フィーリング溢れる力強く熱いインスト曲に生まれ変わっているところでしょう。

バックを固めるのが、当時アルバム「Downwind」(1979)でMike Oldfieldと共演したPierre Moerlen' Gongのメンバー(Benoit、Pierre、Hansford、Pete)を中心としたバンドです。

全体のパーカッシヴなグルーヴも素晴らしいものがありますが、何より強烈なのはやはりMike Oldfieldのギタープレイでしょう。ピックをほとんど使わずに、クラシック・ギターを弾くように右手の指(爪)自在に使いこなすプレイは、当時とても斬新でした。

さらに神がかったような強烈な音が、また素晴らしいですね。神経質そうな細かなビブラートと相まって、聴く者を惹きつけてやみません。もっともっとギタープレイヤーとしても高く評価されるべき人でしょう。

"Ommadawn"終盤にはPierre Moerlenのドラム・ソロもあり、ラストまで一気に駆け抜けます。ある意味Magma Liveに近いような高みへと連れて行ってくれる、強烈なライヴだと言えるのではないでしょうか。

2015年11月19日木曜日

「Tutti insieme 1971」PFM


イタリアのバンドPFM(Premiata Forneria Marconi)がルチオ・バティスティ(Lucio Battisti)によるRAIの番組「Tutti insieme」(1971)に出演した際の映像。
 
曲は1st「Storia Di Un Minuto(幻想物語)」(1972)収録の「La carrozza di Hans」。
  
 
[members]
Flavio Premoli(キーボード、ボーカル)
Franz Di Cioccio(ドラムス、ボーカル)
Giorgio Piazza(ベース)
Franco Mussida(ギター、ボーカル)
Mauro Pagani(バイオリン、フルート、ボーカル)
 
 
衝撃の1stアルバム「Storia Di Un Minuto」発表の年ということで、まさにPFM最初期の映像です。メンバーそれぞれが若々しいのはもちろんですが、多数のバンドが出演したこの番組で他を圧倒してやろうというような、熱い気迫が感じられる演奏ですね。
 
アルバムでは落ち着いたボーカルが、緩急激しいこの曲の緩の部分を担っている感じでしたが、ここでは頭から荒々しく曲を煽っています。
 
チッチョが冒頭から凄まじいドラミングを見せますが、勢い余って左手のスティックを落としながら、すかさず腰に差していた予備のスティックをつかんでスネアロールを続けるあたりに、思わず見ている方も手に汗握ってしまいますね。
 
他の映像からも当初はマウロ・パガーニをフロントマンと位置付けていたようで(確かに美形ですし)、フロントに立って、ボーカル、フルート、バイオリンと大活躍しているのも新鮮です。
 
中盤で一転してムシーダの弾き語り風な静かなパートが入るのも、勢いに任せるだけではない、このバンドの懐の広さや音楽性の高さを感じさせてくれますね。
 
とにかく、最初から素晴らしいバンドであったことが伝わる貴重な記録だと言えるでしょう。
 

「Rockenstock」ゴング(Gong)

 
オーストラリア生まれのDaevid Allenがフランスで結成したフランス/イギリスの混交バンドGongを取り上げた、1973年のフランスのTV番組「Rockenstock」の映像です。
  
 
[members]
Daevid Allen(ギター、ボーカル)
Gilli Smyth(ボーカル、ボイス)
Didier Malherbe(フルート、サックス)
Tim Blake(シンセサイザー、ボーカル)
Steve Hillage(ギター)
Pierre Moerlen (ドラムス、パーカッション)
Mike Howlitt(ベース、ボーカル)
 
[setlist]
1. I Never Glid(5:22より)
2. Witch's Song / I Am Your Pussy(17:15より)

  
両方とも「見えない電波の妖精(Radio Gnome Invisible)」シリーズからで、「I Never Glid」はシリーズpart IIになる4th「Angel's Egg」(1973)、「Witch's Song/I Am Your Pussy」はpart Iに当たる3rd「The Flying Teapot」(1973)の収録曲です。
   
デヴィッド・アレン率いるGongファミリーが、ヒッピー・コミューン的な共同生活をしている様子を取り上げたドキュメンターなので、インタビューが多く、演奏自体は2曲しかありません。でも逆に当時のヒッピーコミューンの様子や、Gongの音楽が生まれる環境が捉えられている貴重な映像だと言えるでしょう。
   
円陣を組んで、これから妖しい儀式でも始まるのかという雰囲気の中で始まる「I Never Grid」ですが、演奏が始まるとそのキレの良いリズムに驚かされます。ヒゲをたたえたピエール・ムーランがワイルドですね。
  
そこにスペーシーなシンセとユルユルなボーカルが乗り、独自のポップでサイケデリックな世界が広がります。サックスとギターのコンビネーションも抜群で、特にバッキングに回った時のスティーヴ・ヒレッジの職人的ギターは素晴らしいですね。
    
「Witch's Song / I Am Your Pussy」ではジリ・スマイスのボーカル&ボイスの炸裂具合と、淡々としたテクニカルな演奏と、デヴィッドの脱力したボーカルの組み合わせが、不思議な浮遊感を醸し出しています。まさにGongワールドです。
   

2015年11月16日月曜日

「POPGRAMA」クラック(Crack)


スペインのバンドCrackが、唯一作「Si Todo Hiciera」(1979)を発表した前後に、スペインの音楽テレビ番組「Popgrama」に出演したものと思われる映像。
 
曲はアルバム冒頭曲「Descenso en el Mahellstrong」。
   
  
[members]
Alberto Fontaneda(ギター、フルート、ボーカル)
Mento Hevia(キーボード、ボーカル)
Rafael Rodriguez(ギター)
Alex Gabar(ベース)
Manolo Jimenez(ドラムス)
  
[suport]
Encarnación González "Cani"(ボーカル、コーラス)
  
   
スペインのバンドとしてはフラメンコ色がない珍しいバンドで、情熱や哀愁よりも、堅実なプレイとバランスの良いアンサンブルで、フルートを活かした叙情的でドラマチックな世界を描きます。一作だけで消えてしまったのが残念なバンドですね。

そんな短命なバンドなので、映像が残っていること自体貴重なのですが、残念なことにスタジオ・ライヴ風ながら、最初から当てぶりだったのか後から差し替えられてしまったのか、何れにしても音はアルバムのもののようです。
  
音だけでなく、カメラが動き回る割にギタリストがほとんど映らないとか、緊張のせいかメンバーの表情が乏しいとか、残念な部分はありますが、フルートのAlbertoがセンターで全体の要になっているようだということがわかります。声質的にもAlbertoがリード・ボーカルではないでしょうか。
  
余談ですが、この曲「Descenso en el Mahellstrong」は、もともと「El Cid」という大作の一部だったようで、アルバム・レコーディングの際にスタジオでプロデューサーの意向で「Descenso en el Mahëllstrong」、「Marchando una del Cid」、「Epílogo」の三曲(全7曲のアルバムの1、5、7曲目)に分けられてしまったのだとか(Wikipediaスペイン版より)。
  
プログレッシヴ・ロック全盛期でさえ長い曲はレコード会社に嫌われていたようなので、1979年のスペインともなれば、このようなアルバムが一枚でも出せたことが奇跡なのかもしれませんね。
  

2015年11月14日土曜日

「Godbluff Live」ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーター



イギリスのバンドVan der Graaf Generatorが、1975年にベルギーで行ったライヴのTV放送用映像。
  
1971年の傑作4th「Pawn Hearts」発表後に活動を停止したあと、1975年にこれも傑作「Godbluff」で復活しますが、そのプロモーション用に行われたライヴで、アルバム全曲を披露しています。


[members]
Peter Hammill (ボーカル、ピアノ、ギター)
Hugh Banton(オルガン、ベース)
David Jackson(サックス、フルート)
Guy Evans(ドラムス、パーカッション)

[setlist]
1. The Undercover Man
2. Arrow
3. Scorched Earth
4. The Sleepwalkers

  
アルバムとは2曲目3曲目が逆になりますが、「The Undercover Man」で始まり「The Sleepwalkers」で終わる構成は同じで、トータルな演奏時間もアルバムとほぼ同じなので、アルバムのイメージにとても近いステージです。

音だけ聴いていても凄みがある音楽ですが、全員ニコリともせずに歌や演奏に没入している様子が、さらに、みなぎるテンションを感じさせてくれます。そして曲間に一瞬見えたPeterのちょっと照れくさそうな笑顔がまた実に良いですね。


抑制を効かせつつ感情を叩きつけるように歌うPeter、猫背で眼光鋭いGuy、冷静沈着なHuhg、ボーカルが入っても吹き続けるDavid。どこかアンダーグラウンドな雰囲気を保ち続けているのも大きな魅力です。
  

「Hayal Dolu Günler İçin」アジア・ミノール

 
フランスのバンドAsia Minor(エイジア・マイナー/アジア・ミノール)、1979年12月にフランスのTVショー「Mosaïque」のためにパリのスタジオで行ったスタジオライヴ。
 
曲は1st「Crossing the Line」(1979)から「Hayal Dolu Günler İçin」。
  
 
[members]
Setrak BAKIREL(ボーカル、ギター、ベース)
Eril TEKELI(ギター、フルート、ベース)
Lionel BELTRAMI (ドラムス、パーカション、キーボード)
Robert KEMPLER(キーボード、ベース)
  
  
SetrakとErilの二人のトルコ系フランス人学生によって、1971年にパリで結成されたバンドです。 
 
1st「Crossing the Line」収録時にはまだRobert Kemplerは加入しておらず、Setrak、Eril、Lionelの3人にゲストとしてキーボードのNicolas Vicenteが参加していました。
 
このライヴの時点では、Robertが参加しベースギターとキーボード(左手がベースパート)の両方を担当しています。そしてこのメンバーで名作「Between Flesh And Divine」(1980)が作られることになります。
 
スタープレイヤーがいるわけでもなく、派手なプレイや超絶アンサンブルやドラマチックな展開があるわけでもなく、突出して訴えかけれ来るものはないのですが、なぜかAsia Minorの音楽は聴く者の心に染み込んできます。
 
曲タイトルがトルコ語であることからも(歌詞もトルコ語?)わかるように、メロディーには中東風なエキゾチズムが感じられます。そのちょっと演歌風なメロディーとフォークソング風なソフトなボーカルの組み合わせに、親しみやすさと物悲しさが感じられれます。実に日本人好みな音とも言えるでしょう。
 
それに対して非常に引き締まった、タイトで小気味好いアンサンブルがまた良く、誰もが前に出過ぎないバランス感覚が、全体として抑制された美しさを生んでいます。特にLionelのドラムスが絶品ですね。
 
テクニックを音楽に活かすとはどういうことかを、聴くたびに考えさせてくれるバンドです。なおバンドはベースを入れた5人体制で、現在も活動しています。
 

2015年11月7日土曜日

「Koncert 1977」オメガ

 
1968年にOmega Red Starとしてアルバムデビューし、1969年に改名後、現在に至るまで活動を続けるハンガリーの国民的大物バンドOmegaのライヴ映像。
 
名作「Gammapolisz」(1978)前年で、まさにシンフォニック路線を極めようとする時期です。曲間に各メンバーのコメントが挿入されています。
 
 
[members]
Kobor Janos(ボーカル)
Molnar Gyorgy (ギター、シンセサイザー)
Mihaly Tamas(ベース、アコースティックギター)
Benko Laszlo(キーボード)
Debreceni Ferenc(ドラムス、ビブラフォン、パーカッション)
 
[setlist]
1. Nyitány(overture)
2. Névtelen utazó(Invitation)
3. Ne legyen(Never Feel Shame)
4. Éjféli koncert(Late Night Show)
5. A könyvelő álma(An Accountant's Dream)
6. Finálé(Finale)
 
 
1と6は「Csillagok Utjan」(1977)、2,4,5は「Idorablo-Timerobber」(1976)の収録曲。2の「Ne legyen」は、名曲ながらも国内オリジナル盤未収録曲。6thアルバム「Nem tudom a neved」(1975)からの4曲をメインに海外進出を狙って英語で歌った独盤(PFMの「Photos Of Ghosts(幻の映像)」みたいな感じでしょうか)「The Hall of Floaters in the Sky」(1975)にのみ収録さています。
 
テクニックに裏付けされた自信と勢いに満ちた、熱いステージですね。ヒラヒラしたステージ衣装がいかにもYesっぽい感じですが、もっとワイルドなエネルギーに満ち(ロープにぶら下がったりしますし)、ハンガリー語が強烈なオリジナリティを発しています。
 
そして、シンセサイザーを中心としたキーボードの多彩な音を活かしながら、親しみやすいメロディーと、ハードロック的なノリと、ダミ声気味なボーカルの存在感で突き進みます。
 
コーラスに加えギターやドラムスにもサポートを得て、大掛かりなステージを展開していますが、会場の規模もかなり大きそうです。それでも観客の熱狂具合いが凄く、いかに愛されているバンドであるかがが見て取れますね。
 

2015年11月5日木曜日

「Live at Nightmusic Concert」FM

 
カナダのバンドFM(エフ・エム)が1976年7月(放送は11月)にTVOntario(カナダのオンタリオ州で放送されている英語放送のテレビ局)で行ったスタジオライヴ。
 
 
[members]
Cameron Hawkins(キーボード、ベース、リードボーカル)
Nash The Slash(マンドリン、バイオリン、ボーカル)

[setlist]
1. (Set Your) Phasors On Stun
- Band and Members Profiles -
2. One O'Clock Tomorrow
3. Black Noise
 
 
3曲とも1977年に発売されるデビューアルバム「Black Noise」から。つまりこれはデビュー前のバンドを特集した番組ということになります。このときまだ二人だけで、「Black Noise」制作時のドラマーMartin Dellerが加入するのは翌1977年のことです。
 
こうして映像で見ると、〝ギタリストとベーシストがいないトリオ〟という変則的なバンド編成の特徴が、よりダイレクトに伝わってきますね。まず目を引くのがナッシュ・ザ・スラッシュの弾くエレクトリック・フラット・マンドリンではないでしょうか。音だけ聴くとギターそのものですが、この小ぶりなマンドリンからギターさながらのハードな音が飛び出すのが新鮮です。
 
ベースパートはキャメロン・ホーキンスがキーボードでカバーしているので、それがどこかスペイシーな雰囲気を醸し出しているのも面白いです。もちろんマンドリンやバイオリンと絡む分厚いシンセの音も良いですね。
 
最初期のバンドの姿を捉えた映像としても、バンドに取っても重要な出来事だったという点でも、貴重な記録だと言えるでしょう。
 

「Sguardo verso il cielo & Una dolcezza nuova」レ・オルメ



イタリアのバンドLe Ormeがイタリア国営テレビRAI UNOで行ったスタジオライヴ。曲目から察すると4thアルバム「Uomo di pezza」が発表された1972年頃の映像だと思われます。
  

[members]
Toni Pagliuca(キーボード)
Aldo Tagliapietra(ボーカル、ベース、ギター)
Michi Dei Rossi(ドラムス、パーカッション)

[setlist]
1. Sguardo verso il cielo
2. Una dolcezza nuova

1はアルバム「Collage(コラージュ)」(1971)の曲で、シングルカットもされたもの。2はアルバム「Uomo di pezza(包帯の男)」(1972)から。両方とも抜粋(サワリ程度)したものをメドレーで演奏しています。

「Una dolcezza nuova」の美しいソロ・ピアノパートを、キーボードのトニ-・パッリューカではなくオーケストラ側のピアニストに任せているあたり、オーケストラとロック・バンドの共演が売りのこの番組的には仕方ないところでしょう。

しかし、EL&P的な超絶キーボード・トリオではなく、アルド・タリアピエトラの素朴で美しいボーカルを核としたロック/ポップ・バンドであることを、くしくも表しているようにも思います。このボーカルとキーボードのバランスが絶妙で、それこそがレ・オルメの大きな魅力と言えるでしょう。

2015年11月2日月曜日

「Storia Di Un Uomo E Di Una Donna」フォルムラ・トレ


イタリアのバンドFormula Tre(Formula 3)がイタリア国営放送RAI UNOで1972年に行なったライヴ映像。共演はRAI所属オーケストラと思われます。

曲は名作「Sognando E Risognando(夢のまた夢)」(1972)から「Storia Di Un Uomo E Di Una Donna(男と女のお話)」。


[members]
Tony Cicco(ドラムス、パーカッション、ボーカル)
Gabriele Lorenzi(キーボード、ベース、ボーカル)
Alberto Radius (ギター、ベース、ボーカル)


全4曲の中で3曲は組曲という大作志向のアルバム「Sognando E Risognando」の中で、唯一短い歌モノであるこの曲は、1st「Dies Irae」(1971)から縁のあるバティスティ&モゴール・コンビの曲。

まさにイタリアらしい甘美なメロディーが味わえる素晴らしい曲で、オーケストラとの相性も抜群。ラディウスのボーカルも良いですね。


2015年10月15日木曜日

「Live in Studio 1976」アレア



イタリアのみならず本家イギリスのトップバンドと比べても、その図抜けたテクニックと強烈な個性で孤高の存在となっているバンドAreaの、TSI(Televisione Svizzera Italiana)出演時のライヴ映像です。1977年の映像という説もありますが、真実は不明です。

Areaの映像はいくつか残っていますが口パク&当て振りがほとんど。しかしこの映像はしっかりと生演奏をとらえているという点で、非常に貴重だと言えるでしょう。



[members]

Giulio Capiozzo(ドラムス、パーカッション)
Patrizio Fariselli(ピアノ、キーボード)
Ares Tavolazzi(ベース)
Paolo Tofani(ギター、シンセサイザー)
Demetrio Stratos(ボーカル、オルガン、パーカッション)

[setlist]
1. Luglio, agosto, settembre(nero)
2. Giro, giro, tondo


Luglio, agosto, settembre(nero)(7月、8月、9月〔黒〕)」は、言わずと知れたデビューアルバム「Arbeit Macht Frei」(1973)の冒頭曲。個人的にはやはり、この曲を初めて聴いた時の衝撃が忘れられません。「Giro, giro, tondo」は、この時期の最新アルバム「Maledett(呪われた人々)」(1977)から。

デメトリオ・ストラトスのボーカルの凄まじさは、声量がとか音域がとか声質がとかいったそれまでの自分の中の尺度を遥かに超えていました。最初は呆然。ギャグか?とさえ思ったものでしたが、聴いているとぐいぐい引込まれていったのを覚えています。

何だこのパワーは??それにバンドのアンサンブルもまったくスキがない。それどころか変拍子は変拍子なんだけど、民族音楽みたいな聴いたこともない変拍子で、さらにちゃんとロックしている! そしてメロディーも変だ。カッコ良くないしどことなく座りが悪い…でも不思議と説得力がある…。いや…、カッコイイかも…。

音楽を聴いてこういう衝撃を受けることは、そうはないだろうと思います。

デメトリオ・ストラトスがホーミーまでこなす実験精神に溢れたボイス・パフォーマーでもあるとか、バンドの曲はバルカン音楽の影響を受けているとかいうことは後から次第に分かってくるわけですが、それでもAreaがそれまでのバンドとは明らかに違う特別な存在であることには変りありませんでした。

こうしてあらためてLuglio, agosto, settembre(nero)(7月、8月、9月〔黒〕)」をライヴ演奏で聴いてみると、実に難しい曲であることがわかります。気を抜くとバラけてしまいそうなアンサンブルや緊張感を、Areaのメンバーたちは、必要以上に音を詰め込まずに(ここが並のバンドと違うところ)ガッチリキープしています。これは本当に凄いです。
 

2015年7月16日木曜日

「Live in Nottingham 1990」キャラバン

 
1967年に結成され70年代に名作を次々と世に送り出したイギリスの名バンドCaravanが、1990年にオリジナルメンバーで再結成し、イギリスのノッティンガムで行ったライヴ。英Central TV音楽番組放送用に録画された高画質映像です。

TV放送されなかった『If I Could Do It All Over Again, I'd Do It All Over You』と『In The Land Of Grey And Pink』も収録されています。

[members]
Pye Hastings(ボーカル、ギター)
Richrard Sinclaire(ボーカル、ベース)
Dave Sinclaire(オルガン、ピアノ、キーボード)
Richard Coughlan(ドラムス)

[guest]

Jimmy Hastings(サックス、フルート)

[setlist]
1. Headloss
2. Videos Of Hollywood
3. Nine Feet Underground
4. If I Could Do It All Over Again, I'd Do It All Over You
5. Winter Wine
6. In The Land Of Grey And Pink
7. For Richard
  
演奏曲目が収録されたアルバムは以下の通り。

『If I Could Do It All Over Again, I'd Do It All Over You』
『For Richard』
 :「If I Could Do It All Over Again, I'd Do It All Over You」(1970)
『Nine Feet Underground』
『Winter Wine』
『In The Land Of Grey And Pink』
 :「In The Land Of Grey And Pink」(1971)、
『Headloss』
 :「For Girls Who Grow Plump In The Night」(1973)、
『Videos Of Hollywood』
 :「Back to Front」(1982)、

名曲のオンパレードですが、メンバーの出入りが激しい中、すべてオルガンのデイヴ・シンクレアが在籍してきた時期のアルバムからとなっています。

デイヴ・シンクレアは基本的にシンセを弾いていて、ファズ・オルガンの音でピッチベンドという“荒技”も当然のように飛び出すのが、いかにも1990年的です。でもオリジナルの良さを損ねていないセンスの良さがまた光るのです。

パイ・ヘイスティングとデヴ・シンクレアの、ともにマイルドな美声を聞かせる二人のボーカリストがしっとりとボーカル曲を聴かせたかと思うと、カンタベリー・ジャズ・ロックのテクニカルなインストに突入するというこの振り幅。これがCaravanらしさですね。

1970年代の翳りはあまり感じられませんが、曲の良さ、演奏の巧みさ、歌の魅力と、キャラバンの素晴らしさが時代を越えて伝わってくる名演です。

2015年5月22日金曜日

「Live at the Empire Pool 1975」リック・ウェイクマン

 
Yesのキーボード奏者として活躍するかたわら、「ヘンリー八世と六人の妻」(1972)、続く「地底探検」(1974)と、ソロとしても充実した作品を作りあげていたRick Wakemanが、1975年にソロ第3作として発表したのが、アーサー王伝説を取り上げたコンセプトアルバム「アーサー王と円卓の騎士たち」(The Myths and Legends of King Arthur and the Knights of the Round Table)です。
 
そして、同年5月に前作「地底探検」をも凌ぐほどのライヴを行います。それがこのウェンブリー・エンパイア・プール(現在のウェンブリー・アリーナ)でのアイス・ショーです。氷のスケート・リンクの真ん中にオーケストラや合唱団を含む大勢のミュージシャンが並び、そのまわりを20人近いスケーターが踊るのです!
 
ここでは「アーサー王と円卓の騎士たち」のパートとして「魔術師マーリン(Merlin The Magician)」を除く6曲(以下のsetlist)が、アルバムに忠実なかたちで演奏されています。本映像はそこから「Guinevere(王妃グィネヴィア」です。
 
[members]
Rick Wakeman(キーボード)
English Rock Ensemble
 Ashley Hole(ボーカル)
 Gary Pickford Hopkins(ボーカル)
 Jeffery Crampton(ギター)
 Roger Newell(ベース)
 Barney James(ドラムス)
 
Martin Shiels(トランペット)
John Hodgeson(パーカッション)
Terry Taplin(ナレーション)
David Measham(オーケストラ&合唱指揮)
 
The English Chamber Choir(合唱)
Nottingham Festival Vocal Group(合唱)
New World Symphony Orchestra(オーケストラ演奏)
 
[set list]
アーサー王と円卓の騎士たち」
(The Myths and Legends of King Arthur and the Knights of the Round Table)
 1. Arthur(アーサー王)
 2. Lady Of The Lake(湖の妖精)
 3. Guinevere(王妃グィネヴィア
 4. Sir Lancelot And The Black Knight(湖の騎士ラーンスロットと黒騎士)
 5. Sir Galahad(騎士ガラハド)
 6. The Last Battle(最後の戦い)
 
この規模の大きさと、ロックコンサートとアイスショーというミスマッチ感は、いかにもなんでもアリな1970年代的です。でも、ここにしかないロックとオーケストラの融合があります。そしてクラシカルでポップでドラマチックで、そのメロディーの素晴らしさにあらためて胸を打たれます。何よりも、Rick Wakemanの奏でるムーグの使い方が圧巻ですね。
 
キワモノ的な企画に終わってもおかしくないところですが、今までとは違ったことをやろうという意気込みと情熱が伝わってくる、徹底したこだわりと誠実さの溢れるステージです。
 

2015年3月30日月曜日

「Palepoli 1972」オザンナ


イタリアのバンドOsannaが、1972年にローマで行なわれた“Festival Avanguardia e Nuove Tendenze(前衛と新しい潮流の音楽の祭典)”に参加した際のライヴ映像。イタリア国営放送Raiのテレビ映像。

曲は2nd「Milano Calibro 9」(1972)からの曲「Variazione VI」と番組内でも表示されていますが、実は大傑作「Palepoli」(1973)収録の「Animale Senza Respiro」の一部です。アルバムはイタリア語ですが、本映像では英語で歌っていますね。

[members]
Elio D'Anna(フルート、テナー&バリトン・サックス)
Lino Vairett(ボーカル)
Danilo Rusici (ギター)
Lello Brandi(ベース)
Massimo Guarino(ドラムス)

いくつか映像が残されていながら生演奏のものが無いOsannaの、唯一と言って良い、生演奏が堪能できる、とても貴重な映像と言えましょう。安定感がありながら荒々しいエネルギーに満ちた、Osannaらしい姿を見ることができます。

途中カットされたような感じなのが残念で、ぜひ完全版を見たいものですが、それでもその存在感は圧倒的。特にLinoのボーカルはとても魅力的ですね。

ちなみに映画「ミラノ・カリブロ9」は、カルト人気を誇るイタリアB級アクションの帝王フェルナンド・ディ・レオ監督作品で、バイオレンス満載(殴る蹴る、銃で撃つ、果てはダイナマイトで爆殺する!)なアクション映画。イタリア映画音楽界の名匠ルイス・エンリケス・バカロフの美しいストリングス・アレンジにOsannaのヘヴィな音をぶつけるぐらいの激しさがないと、映画の濃さに釣り合わなかったのかもしれません。


「Milano Calibro 9」はイタリア語読みなら「ミラノ・カリブロ・ノヴェ」と発音します。「Milano」はイタリア北部の都市名、「Calibro 9」はピストルの「9mm口径」で、インチ表示でいうところの「38口径」(0.38インチ口径)に相当する拳銃を指していると思われます。実はいかにもマフィア&アクション映画のタイトルっぽいのでした。

2015年3月11日水曜日

「Tubular Bells 1974」セバスチャン・ハーディー




オーストラリアのシンフォニック・バンドSebastian Hardieが、大傑作デビュー作「Four Moments(哀愁の南十字星)」(1975)発表前の1974年10月に、地元オーストラリアABC放送の音楽番組「GTK(Get to Know)」で行った、スタジオライヴと思われるTV映像。

演奏曲目はなんと、マイク・オールドフィールド(Mike Oldfield)の「チューブラ・ベルズ(Tubular Bells)」です。

[members]
Mario Millo(ギター、マンドリン、ボーカル)
Peter Plavsic(ベース)
Alex Plavsic(ドラムス、パーカッション)
Toivo Pilt(キーボード)

「チューブラ・ベルズ」が発表されたのが1973年で、ちょうどマリオ・ミーロとトイフ・ピルトが加入した時期。新体制になりプログレッシヴ・ロックの影響を受けたサウンドへと音楽が変化する中で、オリジナル曲に加え20分程度にバンド・アレンジした「チューブラ・ベルズ」を演奏していたようです。


「チューブラ・ベルズ」には、マイク・オールドフィールド本人が演奏した1973年のスタジオライヴ映像がありますが、そちらが多くのサポートを得てオリジナルに忠実な演奏を行っているのに比べ、このセバスチャン・ハーディ版は4人のバンド用に見事にまとめられているのが特徴です。

 
そこに感じられる、実にスムーズで美しい流れは、「Four Moments」などのオリジナル曲に通じるもので、この自然な流れにセバスチャン・ハーディーらしさが出ていると言えるでしょう。演奏技術も高いですが、それ以上に楽曲のアレンジや楽器のバランスの素晴らしさが伝わってきますね。

オリジナルの多彩な楽器パートは、トイフ・ピルトのキーボードが大活躍して、物足りなさを少しも感じさせません。もちろんマリオ・ミーロのギターの滑らかさや美しさ、そして安定感も抜群です。


若干映像が音に遅れ気味にズレているのと、20分の完全版ではない点は残念ですが、“伝説”であった「セバスチャン・ハーディーがアルバム・デビュー前に演奏していた『チューブラ・ベルズ』」の映像が残っていたとは奇跡です。