2021年7月11日日曜日

「Live in Tokyo 1975」Strawbs(ストローブス)


イギリスのバンド、ストローブスが、8thアルバムとなる最新作「Ghost(幻影)」のツアーで1975年に来日した際の、TV放送用スタジオ・ライヴ映像。NHKのスタジオに観客を入れて収録されたもので、1975年5月10日に「ヤング・ミュージック・ショー」で放映されました。

[members]
Dave Cousins - vocals, guitar 
Dave Lambert - lead guitar, vocals
Chas Cronk - bass guitar, vocals
John Hawken - keyboards
Rod Coombes - drums, percussion

[tracklist]
1. Lemon Pie
2. Remembering / You And I (When We Were Young) 
3. New World
4. The Life Auction
5. drum solo
6. Hero And Heroin
7. Just Love
8. Down By The Sea

各曲の収録アルバムは以下の通りです。
「Lemon Pie」、「
Remembering」、「You And I  (When We Were Young) 」、「The Life Auction」→幻影Ghosts)」(1975)

「New World」→「
グレイヴ・ニュー・ワールドGrave New World」(1972)

Hero And Heroin」、「Just Love」→「Hero And Heroin(ヒーロー・アンド・ヒロイン)」(1974)

「Down By The Sea」→「バースティング・アット・ ザ・​シームス(
Bursting at the Seams)」(1973)

アコースティックでポップなサウンドで出発したバンドが、リック・ウェイクマンの加入を機にトラッドやクラシック音楽を取り込み、次第にエレクトリック・バンド化も進みます。

この頃になるとさらにプログレッシヴ・ロックへと傾倒し、
ルネッサンスの初代キーボード奏者ジョン・ホーケンを迎え、「ヒーロー・アンド・ヒロイン」(1974)、「幻影」(1975)とアルバムを発表します。

そのジョン・ホーケンが、リック・ウェイクマンばりに、グランドピアノ、フェンダー・ローズ、黒いメロトロンM400S2台、ミニ・ムーグ2台と、キーボードの〝
要塞〟に陣取っているのが印象的です。

もちろんプレイの面でも、
美しいローズ・ピアノ、物憂いミニ・ムーグ、ドラマチックなメロトロンと、職人的な素晴らしい仕事をしています。

ライヴらしくアルバム以上に熱い演奏になっていて、
人懐こいメロディーの素晴らしさ、デイヴ・カズンズの独特なボーカル、三声のハーモニーの魅力に、ロックっぽい力強さが加わっているのも魅力ですね。

当時「幻影」をFMラジオで聞き、アルバムを入手し、いわゆるプログレッシヴ・ロックと言うには少し地味でポップ過ぎるかなと思いつつも、アルバムが愛聴盤になっていたこともあり、「ヤング・ミュージック・ショー」を食い入るように見た記憶がありますが、今見ても、実に安定した演奏による素晴らしいステージだったことが分かります。

本ツアー後にジョン・ホーケンはバンドを脱退し、イリュージョンに参加して2枚のアルバムを制作することになります。ジョン・ホーケンのプレイ映像としても、貴重なものと言えるでしょう。

2021年6月2日水曜日

「The Scene of Pale Blue live in 1987」アウター・リミッツ(Outer Limits)


海外での人気も高かったアウター・リミッツが、4thアルバム「ペール・ブルーの情景」(1987)をリリースした1987年1月に、横浜VIVRE21で行ったライヴ映像。

曲はアルバム・タイトル曲である大作「ペール・ブルーの情景」。


[members]
塚本周成:キーボード
川口貴:バイオリン、ギター
荒牧隆:ギター
桜井信行:ドラムス
上野知己:ボーカル、キーボード
石川 正:ベース


武蔵野音楽大学の学生であった、塚本周成、杉本正、川口貴の3人により結成されたアウター・リミッツは、塚本の本格的な作曲・オーケストレーションと、川口の華麗なバイオリンを特徴としたシンフォニック・バンドです。

2nd「ミスティ・ムーン」(1985)がインディーズで大ヒットし、「少年の不思議な角笛」(1986)が、フランスの「Harmonie」誌で80年代の世界のプログレ作品のベストアルバムに選ばれるなど、海外の人気も高まりました。

この「ペール・ブルーの情景」は、いわゆるLPアルバムの片面を使った大作ですが、クラシック音楽を文化的バックグラウンドとして持たない日本のバンドが、そのクラシックな技法を、楽曲面でも演奏面でも対等なレベルまで高めて、なおかつモノマネではないオリジナリティーあふれる音楽として結実させた名曲です。

複雑な楽曲を見事に再現する、メンバーの技量が素晴らしいですね。アルバムとは違って、終盤のギター・ソロのパートで、川口がバイオリンを弾きまくっているのが新鮮です。

2021年5月23日日曜日

「Song of The Marching Children live 1972」アース&ファイア(Earth & Fire)


オランダのバンドアース・アンド・ファイア(Earth & Fire)が1971年に発表した2ndアルバム「アムステルダムの少年兵(Song of The Marching Children)」から、1972年のテレビ出演した際の映像。

曲は、アルバムB面を費やした18分を越えるタイトル曲から、前半部分を抜粋したもの。


[members]
 Jerney Kaagman:リード・ボーカル
 Chris Koerts:ギター、エレクトロニクス、ボーカル
 Gerard Koerts:メロトロン、オルガン、ピアノ、シンセサイザー、フルート、ボーカル
 Hans Ziech:ベース
 Ton van der Kleij:ドラムス、パーカッション、ボーカル


そもそもは1970年に「Seasons」をヒットさせたポップ・バンドで、2ndからプログレッシヴ・ロック・バンドに変わりますが、その後またポップ・バンドに戻り、ディスコ調の「Weekend」というシングル・ヒットを飛ばします。
 
「アムステルダムの少年兵」は、次作「アトランティス」(1973)とともに、プログレッシヴ・ロック作品として、高く評価されているものです。特に1971年という、まだまだイギリスでもメロトロンを使っていたバンドは少数だった時期に、メロトロンを大々的に使用したことは、大きな特徴と言えるでしょう。

テンポは少しゆっくり目でしょうか、でも忠実にそして丁寧に、アルバムを再現していることが分かります。基本がポップなので、大作になっても、メロディ&歌がしっかりしているところが魅力です。ジャーニー・カーフマンの力強いボーカルが良いですね!


2021年5月19日水曜日

「Ciclos(シクロス/四季)1975」抜粋 ロス・カナリオス(Los Canarios)

 
スペインのLos Canariosが1975年にrtve(スペイン放送協会)というスペインの公共放送の番組に出演した際の映像。
 
曲はヴィヴァルディの協奏曲集「四季」を大胆にアレンジした大作「Ciclos(シクロス/四季)」(1974)からの抜粋です。


[members]
 Eduardo "Teddy" Bautista:キーボード、ボーカル
 Antonio Garcia de Diego:ギター、ビブラフォン、スピネット、ボーカル
 Mathias Sanvellian:キーボード、バイオリン
 Christian Mellies:ベース
 Alain Richard:ドラムス、パーカッション
 
[setlist]
1. 「第一の輪廻:遥かなる楽園」抜粋
2. 「第四の輪廻:回復された環」抜粋
 

ロス・カナリオスはこれ以前にアルバムを3枚出していて、ブラスの入ったロック・バンドだったのですが、リーダーのバウティスタが兵役につくことになり、一旦解散します。

その後、バウティスタが新たなメンバーを集め、のちの素晴らしいソロ・アルバムを出すことになるアルフレッド・カリオンをアレンジャーにして作り上げたのが、以前の音楽とはまったく違ったこの「Ciclos」でした。

正直なところ、演奏は当て振りですし、そのためか風景のスチール映像ばかりが目立ちますので、演奏の様子はほとんど分かりません。

ただ、リーダーのテディ・バウティスタによる、このアルバム制作のためだけのプロジェクト的なバンドだったと思われますので、バンド活動はほとんどしなかったのではないでしょうか。アルバム自体が、スペイン国立歌劇団やオーケストラの協力を得たり、SEを多様したりと、強力なスタジオワークのたまもののような作品なので、そもそもライヴをする予定はなかったのかもしれません。

と考えると、実にレアで貴重な映像だと言えるでしょう。
 
ちなみに、バウティスタは、これ以前はボーカル&ギターだったのですが、ここではまるでリック・ウェイクマンのようにまわりにキーボードを並べています。バンドを一旦解散したあとに、〝プログレッシヴ・ロック〟に触れて、自分もこれがやりたくなったのではないかと、勘ぐってしまいたくなるような、ちょっと微笑ましい光景です。

とは言え、もちろんアルバム自体は、よくぞ作ってくれましたと言いたいほどの大傑作です。

ちなみにトリアナの1st「El Patio」(1975)がリリースされ、やがて〝アンダルシアン・ロック〟の波が起こるのは、まだ先のことです。


2021年5月10日月曜日

「バタクラン・ライヴ 1973」カン(CAN)


ドイツのバンド、カン(CAN)が、フランスのパリのバタクラン劇場で、1973年3月に行ったライヴ映像。

[members]
Holger Czukay:ベース
Michael Karoli:ギター
Jaki Liebezeit:ドラムス
Irmin Schmidt:キーボード
Damo Suzuki:ボーカル

[setlist]
1. Spoon
2. Pinch
3. Sing Swan Song

曲はすべて4th「Ege Bamyyasi」(1972)収録曲です。

「Monster Movie」(1969)でデビューした時には、ボーカルにマルコム・ムーニーを迎え、トライバルなビートとマルコムの持つリズム感を活かし、同じリズムやフレーズを延々とくり返しながら、プリミティブなグルーヴを生み出していたカン。

続くアルバム「Tago Mago」(1971)でボーカルがダモ鈴木に交代し、アナログ2枚組で10分以上の大作を3曲も収録しましたが、続く「Ege Bamyyasi」では曲がコンパクトにり、ある意味とっつきやすくになりました。

そして「Spoon」は先行シングルとしてリリースされ、ドイツのチャートで6位に入るヒットソングになるのです。

どの曲もアレンジやテンポがアルバムと異なり、即興の迫力が半端なく、特にJaki Liebezeitの叩き出すビートが素晴らしいです。

思いの外聞き入ってしまったのが、Michael Karoliのギター。全体がカッチリしたアンサンブルになることを拒むかのような、先の読めないアナーキーなプレイが最高でした。

そして混沌としていて荒々しいラスト。Irmin Schmidtのブチ切れたようなキーボードが印象的でした。

2021年4月27日火曜日

「Live in 1974」グリフォン(Gryphon)

イギリスの古楽ロック・バンド、グリフォン(Gryphon)が、1974年にアイルランドのTV番組「The Music Makers」に出演したスタジオ・ライブ映像。


[members]
Richard Harvey (リコーダー、クラムホルン、キーボード、ギター、マンドリン)
Brian Gulland(バスーン、クラムホルン、リコーダー、キーボード、ボーカル)
Graeme Taylor(ギター、キーボード、リコーダー、ボーカル)
David Oberle(ドラムス、パーカッション、リード・ボーカル)

[setlist]
1. Kemp's Jig
2. Sir Gavin Grimbold
3. Pastime with Good Company
4. Mother Nature's Son
5. The Ploughboys Dream
6. Tea Wrecks
7. Estampie


演奏曲は、「4. Mother Nature's Son」がビートルズの「ホワイト・アルバム」(1968)収録曲、「5. Ploughboys Dream」が2nd「Midnight Mushrumps(真夜中の饗宴)」(1974)からで、残りはすべて1st「Gryphon(鷲頭、獅子胴の怪獣)」(1973)収録曲です。

ちなみに「3. Pastime with Good Company」は、アルバムではインストゥルメンタルでしたが、ここでは歌入りバージョン。ちなみに「The Ploughboys Dream」は、古いフォークソングを独自にアレンジした曲とのこと。

グリフォンは、ロンドンにある名門の音楽学校である王立音楽大学(ロイヤル・カレッジ・オブ・ミュージック)出身のリチャード・ハーヴェイとブライアン・ガランドが中心になって結成され、伝統的なイギリスのフォーク・ミュージックと中世ルネッサンス・サウンドをロックと融合させた、稀有なバンドです。

1stではまさに中世音楽そのものといったアコースティックなサウンドでしたが、2ndではメンバーにエレキ・ベース奏者が加わり、若干ロック的なビートが感じられるようになり、その後イエスのツアーに同行した影響が大きく出て、古楽的な趣を残しながらも、きらびやかでハードなロック・サウンドに近づきます。

このTVライブ時は、まだベース奏者がいない1stのラインナップですので、まさに森の中から突然現れたいにしえの楽師たち、といった趣があり、それが時空を飛び越えて、見知らぬ異界をのぞき込むような魅力を持っていますね。

とは言っても、決して雰囲気重視なわけではなく、4人の演奏と歌は実に見事で、アコースティック楽器の高速アンサンブルに見られる卓越した技術など、素晴らしいの一言。

バンドは2015年頃に復活し、2018年に「Reinvention(再確立)」、2020年に「Get Out Of My Father's Car (ゲット・アウト・オヴ・マイ・ファーザーズ・カー)」を発表しています。

楽器の説明をしておきますと、ハルモニウムは、足踏み式リード・オルガンのことです。クルムホルンは、中世ルネサンス時代に一般的だった木管のリード楽器で、ステッキを逆さにしたような形をしています。カズーのような音がします。

「Beat Club 1971」キャラバン(Caravan)


イギリスのバンドCaravan(キャラバン)が、1971年にドイツのTV番組「Beat Club」に出演した際のスタジオ・ライブ映像。

[members]
Richard SInclair:アコースティック・ギター、ベース、リード・ボーカル
Dave Sinclair :キーボード
Pye Hastings:ギター
Richard Coughlan:ドラムス

[set list]
1. Golf Girl
2. Winter Wine

曲はどちらも3rdアルバム「In The Land Of Gray And Pink」(1971)から。

「In The Land Of Gray And Pink」と言えば、とにかくLPのB面すべてを占めた22分を超える大作「Nine Feet Underground」。デイヴ・シンクレアのオルガンをメインに、流れるように展開するアンサンブルが素晴らしい傑作です。

でも、Caravanの魅力は、そうしたインスト・アンサンブルが、リチャード・シンクレアやパイ・ヘイスティングのジェントルなボーカルと人懐っこいメロディーと同居しているところにあります。

そんな魅力が爆発しているのがこの2曲。ドラマチックに疾走するドラム&ベース、哀愁あふれるボーカル、そして幻想的なソロを展開するオルガン。ギターのパイ・ヘイスティングはカッティングに徹していて、ここではやや地味ですが、このクールなアンサンブル重視な感じもまたCaravanらしいところでしょう。