2013年3月31日日曜日

「Caravan Live at the Bataclan 1973」キャラバン



イギリスのバンドCaravanが1973年11月にパリのバタクラン劇場で行なったステージにインタビューを加えて制作された、フランスのTV番組「Pop Deux」の映像です。

[members]
Pye Hastings(ギター、ボーカル)
Richard Coughlan(ドラムス)
Geoffrey Richardson(ヴィオラ)
Dave Sinclair(キーボード)
John G Perry(ベース、ボーカル)

[set lilst]
1. The Dog, The Dog, He's At It Again
   ~ Interview (フランス語吹き替え付き)~
2. Memory Lain, Hugh(最終パート抜粋)
3. For Richard(最終パート抜粋)
4. Medley: L'Auberge Du Sanglier / A Hunting We Shall Go / Pengola / Backwards / A Hunting We Shall Go (Reprise)

For Girls Who Grow Plump In The Night(夜ごと太る女のために)」が発表された1973年のステージということもあって、「For Richard」のみ1970年発表の「If I Could Do It All Over Again, I'd Do It All Over You(キャラバン登場)」からで、それ以外の3曲は最新アルバムからとなっています。

メンバーもこのアルバムのレコーディング時のもので、ベース&ボーカルのリチャード・シンクレア(Richard Sinclair)が脱退し代わりにジョン・G・ペリーが加入、さらにヴィオラにジェフリー・リチャードソンを迎え、パイ・ヘイスティング主導の新たなラインナップになった時期です。

美しく甘いメロディーを歌うパイ・ヘイスティングの柔らかいハイ・トーン・ボーカルが実に良いですね。ちょっと固めな声のジョン・G・ペリーとのハモりもバッチリです。

そして非常にタイトなインスト部分がまた素晴らしい。出戻りとなったデイヴ・シンクレアのカンタベーリー・テイスト溢れるオルガンも良い味を出しています。

演奏力の高さは、インタビュー後の怒濤のインスト・パートを聴けば明白。ドラマチックなプログレ度も一気に加速します。特にジェフリー・リチャードソンのヴィオラが、すでに無くてはならない存在として大活躍していますね。

この甘いメロディー&ボーカルと高度な演奏力の絶妙なバランスが、キャラバンの真骨頂と言えるでしょう。
 

2013年3月30日土曜日

「Exit Stage Left 1981」ラッシュ



「Exit Stage Left」は、カナダを代表するバンドRushが、「Moving Picures」(1981)発表後に行なったツアーを収めたフル・コンサート映像です。同名のアルバムが「ラッシュ・ライヴ〜神話大全」という邦題でリリースされていますが、それとは別の内容となっています。

[members]
Geddy Lee(ベース、リード・ボーカル、キーボード)
Alex Lifeson(ギター、ベース・ペダル・シンセサイザー、バッキング・ボーカル)
Neil Peart(ドラムス、パーカッション)
  
[set list]
1. Limelight
2. Tom Sawyer
3. The Trees
4. Xanadu
5. Red Barchetta
6. Freewill
7. Closer to the Heart
8. YYZ
9. By-Tor and the Snow Dog
10. In the End
11. In the Mood
12. 2112: Grand Finale

「ライブで再現できない曲は基本的に作らない」と公言する彼らですが、三人だどこまでできるか、技術と工夫とアイデアの限界を極めんとするかのような緻密なアレンジと、ゲディ・リーとアレックス・ライフソンの絶妙なコンビネーションによる、音の薄さを微塵も感じさせないパフォーマンスに、ただただ圧倒されます。

さらに彼らの凄いところは、演奏に汲々とするのではなく中盤にゲディとアレックスが共にダブルネック・ギターを弾きまくるように、ハードロック・バンド的なノリの良さやカッコ良さを常に保ち続けているところ。

もちろんニール・パートのテクニカルで饒舌なドラミングが、ラッシュ・サウンドに大きなダイナミズムや緊張感を生み出していることも改めて分かります。

Rushは現在に至るまで精力的にアルバムを発表し、充実したライヴ活動を続けています。しかしやはり代表作である「Moving Pictures」に至る時期には格別の思いを抱いている方も多いでしょう。プログレッシヴな面も強い時期で、大作「Xanadu」も取り上げられているのも嬉しいですね。

2013年3月29日金曜日

「Old Grey Whistle Test 1975」カン(CAN)



ドイツのロックバンドCANがイギリスBBCのTV番組「Old Grey Whistle Test」に出演した時のスタジオ・ライヴ。曲は「Landed」(1975)から「Vernal Equinox」。 

このライヴでのVernal Equinox」は、アルバム・ヴァージョン以上に歯切れの良いリズム・アンサンブルを聴くことが出来ます。

[members]
Holger Czukay(ベース)
Michael Karoli (ギター)
Jaki Liebezeit (ドラムス)
Irmin Schmidt(キーボード)

「Landed」は、マルコム・ムーニー(Malcolm Mooney)、ダモ鈴木といった専任ボーカリストが脱退し、残りのメンバーでボーカルを担当して作り上げた作品。CAN流ポップス/ハードロックアルバムとも言われます。でもテクニックがあるのに飄々としたリズム・セクションは相変わらずやっぱりCANです。

そのリズムを支えているのはベースのホルガー・チューカイとドラムスのヤキ・リーベツァイト。特にジャズ・ドラマーとし活躍していたヤキの、軽やかで切れのある、流れるようなドラミングが素晴らしいです。 

その鉄壁のリズムの上で、ミヒャエル・カローリのギターとイルミン・シュミットのキーボードが、自由に音を乗せていきます。イルミン・シュミットのパーカーションのようなキーボードさばきが、動画で見ると絵になりますね。

アルバムほど音を重ねていないため、どこかしらアンビエント寄りの名作「Future Days」(1973)のような浮遊感も感じられるのもまた面白いところです。

2013年3月24日日曜日

「Sounding Out 1971」イエス



イギリスを代表するプログレッシヴ・ロック・バンドYesの1971年の映像で、1971年10月3日にロンドン北西部にあるHemel Hempsteadでのステージにインタビューを挟んだBBCのTV番組「Sounding Out」です。

傑作「Fragile(こわれもの)」発売が1971年11月26日なので、その直前のライヴです。「Long Distance Runaround」、「The Fish」、「Mood For a Day」がその「Fragile」からの曲、残りは3rd「The Yes Album」。からの曲となります。

[members]
Jon Anderson(ボーカル)
Chris Squire(ベース、ボーカル)
Steve Howe(ギター、ボーカル)
Bill Bruford(ドラムス、パーカッション)
Rick Wakeman(キーボード)
  
[set list]
1. Long Distance Runaround
2. I've Seen All Good People(Your Move)
3. Perpetual Change
4. The Fish
5. Mood For a Day
6. Yours Is No Disgrace

何と言ってもこの映像の特筆すべき点は、「Fragile(こわれもの)」「Close to the Edge(危機)」という二大傑作アルバムのラインアップによるライヴだということです。Yesの映像は比較的多く残っていると思われますが、この“黄金期”のラインアップによるものは非常にレアであり貴重だと言えるでしょう。

リック・ウェイクマンのYes加入が1971年7月頃、ビル・ブルーフォードのYes脱退が1972年6月頃なので、二人が同時に在籍した時期は非常に短いと言えます。ちょっと前の映像だとキーボードがトニー・ケイ(Tony Kaye)、ちょっと後のものだとドラムスがアラン・ホワイト(Alan White)になってしまいます。有名な「Yessongs」映像もアラン・ホワイトによるライヴです。

服装や舞台装置なども含めた独特の雄大な世界を築いている「Yessongs」の映像と比べると、このステージ映像は地味で誰もケイプを身につけたりもしていませんが、非常に力強い演奏で観客もノリノリなことがわかります。 

このメンバーでの「Roundabout」と「Close to the Edge」のライヴ映像が、いつかどこかから発掘されるのを夢見て、この貴重な映像を楽しみたいと思います。

2013年3月14日木曜日

「Sanremo 1978」ゴブリン



イタリアのバンドGoblinが1978年にサンレモで行なったフル・ライヴのTV映像。ダリオ・アルジェント監督のホラー映画のサントラを担当したことで有名なバンドですが、ここではそうしたオドロオドロしい曲は控え目で、オリジナル・アルバムをメインに、多彩な楽曲を聴かせてくれます。

[members]
Claudio simonetti(キーボード)
Massimo Morante(ギター、ボーカル)
Fabio Pignatelli(ベース)
Agostino Marangolo(ドラムス、パーカッション)
Antonio Marangolo(サックス)

[set list] 
1. Aquaman
2. Sinp Snap
3. Profundo Rosso

4. Mark Il Bagarozzo
5. Notte
6. Orera Magnifica
7. Le Cascate Di Viridiana
8. Un Ragazzo D'argento 


1、 2がオリジナルアルバム「Roller(ローラー)」(1976)、3がサウンドトラック「Profond Rosso(サスペリア2)」(1977)、4〜8がオリジナルアルバム「 Il Fantastico Viaggio Del Bagarozzo Mark(マークの幻想の旅)」収録曲です。


各人の演奏能力は非常に高く、テクニカルなPink Floyd風な曲からフュージョン的なノリの良い曲まで、音楽的な幅がとても広いのも、サントラを手がけている彼らならではと言えるでしょう。特にアゴスティーノ・マランゴーロのドラミングが素晴らしいですね。

7の「Le Cascate Di Viridiana」でマッシモ・モランテのギターが接触不良を起こしてしまい、尻つぼみのように曲が終って、急遽メンバー紹介が始まります。そのショックか、ラスト曲「Un Ragazzo D'argento」でのマッシモのボーカルはちょっと精細を欠いた感じ。こういうアクシデントも生ライヴらなでは。

尚、「5. Notte」のみ、語りを含むほぼ全てがテープかと思われます。

「Progfest 1994」アネクドテン



スウェーデンが誇るヘヴィ・シンフォニックバンドAnekdotenの「Progfest 1994」におけるライヴ。
 
曲は1st「Vemod(暗鬱)」(1993)からの大曲「The Flow」をはさんで、前半がインプロヴィゼーション、後半がアルバム未収録のホルスト作「惑星」から「火星」のAnekdotenヴァージョン。King Crimsonの「In the Wake of Poseidon」(1970)に収録されている「Devil's Triangle」のカヴァーと言っても良いかと思います。


[set list]
1. Muscle Beach Benediction - Biceps At Play"
3. Wheel
4. Mars

[members]
Nicklas Berg(ギター、キーボード、ボーカル)
Peter Nordin(ドラムス、パーカッション)
Jan Erik Liljestrom (ベース、ボーカル)
Anna Sofi Dahlberg(メロトロン、チェロ、ボーカル)

King Crimsonからの影響は確かに大きいのですが、King Crimsonの力強さとは別の、奈落に落ちていくような薄暗さと叙情が渦巻きます。

ニクラスはギターだけでなくメロトロンもメインに弾いています。いわゆるハードロックやヘヴィ・メタル的なギターソロは控え目で、ヤンの轟音ファズ・ベースサウンドと共に、彼のギターが繰り出すリフがAnekdotenサウンドの核と言って良いかもしれません。彼らの曲はメロディー以上にリフでジワジワ迫ってくるのが特徴ですね。

もう一つ彼らの大きな特徴と言えるのが、メロトロンの使い方・聴かせ方の上手さ。これは昨今のヴィンジェージ・バンドが束になっても叶いません。実にドラマチックにメロトロンを鳴らすことができるのです。これはもうセンスと愛のなせるワザでしょう。

もちろんメロトロン頼みではなく、アンサンブルの素晴らしさも一級品。特にペーターのドラムスは今のテクニカルなドラミングとは違った、70年代的魅力に満ちています。

この当時はアンナがチェロを弾く場面が多く、低音で弦が擦れる音がまた怪しくも激しい彼らのサウンドに合っておりました。
 

2013年3月10日日曜日

「Live at Rai 1977」ロカンダ・デッレ・ファーテ



イタリアのバンドLocanda Delle Fateがイタリアの公共放送RAIで行なったスタジオライヴ。収録は彼らのデビューアルバム「Force Le Lucciole Non Si Amano Piu(妖精)」が発表された1977年と思われます。

[members]
Leonardo Sasso(ボーカル)
Alberto Gaviglio(ギター、フルート、ボーカル)
Ezio Vevey(ギター、ボーカル)
Michele Conta(ピアノ)
Oscar Mazzoglio(キーボード)
Luciano Boero(ベース)
Giorgio Gardino(ドラムス、パーカッション)

[set list] 
1) Forse Le Lucciole Non Si Amano Più
2) Profumo di Colla Bianca
3) Sogno di Estunno
4) Non Chiudere a Chiave le Stelle
5) La Giostra

白黒で画質が良くないのが残念ですが、それでもいわゆるプログレ的な音が衰退しつつあった時期にデビューしたLocanda Delle Fateの貴重な記録です。映像的にはやはりリードボーカルのレオナルド・サッソの存在感が光りますが、実は彼のやや平板な歌を支えている、ツイン・キーボード、ツイン・ギターも可能なメンバー達の緻密で多彩なアンサンブルが見事です。

アコースティック・ピアノを活かしたドリーミーな雰囲気は、ライヴになってもしっかり保たれていて、彼らの演奏力の高さがうかがえますね。歌モノとして聴いても素晴らしい曲ばかりです。

ちなみに1)〜4)はForce Le Lucciole Non Si Amano Piu」からの曲で、ラストの「La Giostra」は2012年に発表された「ザ・ミッシング・ファイアーフライズ 」で初めて日の目を見た“幻の曲”でありました。

2013年3月9日土曜日

「Concertino 1976」マクソフォーネ



イタリアのバンドMaxophoneがTV番組「Concertino」に出演した時の映像で、曲は唯一作「Maxophone」(1975)から「Al Mancato Compleanno Di Una Farfalla」。

アルバムにはゲストとして弦楽器メンバーが加わっていましたが、ここでは純メンバーのみの演奏。“演奏”とは言っても実はアルバムの音を流した口パクだと思われますが、かなり忠実に演奏を“再現”しています。

[members]
Albert Ravasini(ベース、アコースティック・ギター、リード・ボーカル)
Sergio Lattuada(キーボード、ボーカル)
Roberto Giuliani(ギター、ピアノ、ボーカル)
Maurizio Bianchini(コルネット、トロンボーン、フレンチホルン、ビブラフォン)
Leonardo Schiavone (クラリネット、サックス、フルート)
Sandro Lorenzetti(ドラムス)

彼らの特徴は何と言ってもバンド内に金管楽器奏者マウリチオと木管楽器奏者レオナルドの二人を擁しているところでしょう。この二人が加わるところで、ストリングスとも異なる、牧歌的な雰囲気が随所に醸し出され、イタリアのバンド特有の美しいメロディーやハーモニーにも独自の世界が広がります。

もちろんアグレッシヴなギター、タイトなドラムス、多彩なキーボードによるアンサンブルも素晴らしく、さらにまたアルベルト・ラヴァズィーニの渋めのボーカルがまた良いのです。色々な魅力が詰まったサウンドだからこそ、アルバム一枚しか発表されなくても、彼らの音楽は今日まで聴かれ続けているのでしょうね。

1975年という、ちょっと遅れた時代に登場したこともあって、バンドとしては厳しい状況だったと思われますが、ことアルバムに関しては逆にプロダクションがしっかりしていて、各楽器の音も美しく、バランスも良く、今聴いてもまったく古さを感じさせない洗練された音になっているのも大きな魅力です。
 

2013年3月8日金曜日

「Old Grey Whistle Test 1974」ウォーリー



イギリスのバンドWallyによるOld Grey Whistle出演時のスタジオライヴで、曲は1st「Wally」(1974)から「The Martyr」。

WallyはStrawbsに似てフォーク・ミュージックをベースにしながらエレクトリック・楽器を導入することでプログレッシヴ・ロックに近づいていったグループです。そこはかとなくカントリー風味が漂うのが彼らの一つの特徴と言えるでしょうか。

Strawbsで“初めてのフォーク・ロック・バンド”を目指したリック・ウェイクマンが1stアルバムのプロデュースを行なっている(ボブ・ハリスと共同)のも、なるほどとうなずけるものがあります。

[members]
Roy Webber (リード・ボーカル、アコースティック・ギター)
Pete Cosker(エレクトリック・ギター、ボーカル)
Paul Gerrett - Smith(ピアノ)
Paul Middleton(ベース)
Roger Narraway(ドラムス)
Pete Sage (バイオリン)

1stではピアノを主体としたプレイ をしていたポール・ゲレットが、2nd「VALLEY GARDENS (幻想の谷間)」(1975)ではニック・グレニー・スミス(Nick Glennie - Smith)に代わり、オルガン、メロトロン、シンセサイザーなどのエレクトリック楽器が大胆に導入されます。これによりサウンドにドラマチックな広がりが生まれ、カントリーっぽかったバイオリンが朗々と歌いだし、特にLP片面を使った組曲「The Reason Why」で一気にWallyのプログレッシヴ・ロック・サウンドが完成します。

 それでも基本の人なつこいメロディーと柔らかなハーモニーを中心としたアコースティックなサウンドは1stから不変。この「The Martyr」でもバイオリンとピアノはクラシカルさとフォーク/トラッド風味を醸し出し、元々シンガー・ソング・ライターだったロイ・ウェバーとピート・コスカーが美しいハーモニーを聞かせてくれます。特にピート・セイジの叙情に走ることなく落ち着いたバイオリンの響きがイギリス的で、とても良い味を出していますね。


そのフォーク的な曲を硬質なベースと泣きのギターがドラマチックに盛り上げるのがWallyらしいところ。Yesの前座を務めたというのも納得です。

尚、Wallyは2009年に復活し2010年には「Montpelier」という3rdアルバムを発表しています。
 

2013年3月3日日曜日

「Top of the Pops 1971」ストローブス



デイヴ・カズンズとトニー・フーバーが中心となって結成されたStrawberry Hill Boysを母体とするブルーグラス・バンドは、1968年Strawbsとしてアルバム・デビューします。

当初はブルー・グラスをルーツとするフォーク・ミュージックを奏でていたバンドですが、実はFairport Convention加入前のサンディ・デニーやCurved Air加入前のソーニャ・クリスティーナが在籍したこともあるという重要バンド。もちろんプログレ的にはあのリック・ウェイクマンがYes加入前に在籍していたことで有名です。

この映像は1971年にBBCの「Top of the Pops」出演時のスタジオ・ライヴ。曲は4th「From the Witchwood」(1971)から「Hangman and the Papist」。キーボードはリック・ウェイクマンです。

[members]
Dave Cousins(ボーカル,ギター)
Tony Hooper(ボーカル、ギター)
Rick Wakeman (キーボード)
Richard Hudson(ドラムス、ボーカル)
John Ford(ベース、ボーカル) 

冒頭リック・ウェイクマンによる、目の醒めるようなオルガン・ソロが入ります。実は当時ローカル・バンドで仕事をしていたリックは、そこでの定職・高収入を蹴って、Strawbs加入を決めたのですが、その大きな理由は1)デイヴ・カズンズの書く曲と歌詞に惚れ込んだ、2)Strawbsを“最初のフォーク・ロックバンド”にすることでリーダーのデイヴ・カズンズと意気投合した、3)Strawbsにはその頃パリ1週間というライヴの予定が入っていて、結婚予定だったリックはハネムーン旅行にちょうど良いと思った、からなのだそうです。

3)の理由はジョークとして、リックの弾くオルガンはバッキングに回ってもロック的なスリルを醸し出し、フォーク・ソング的な曲にドラマチックな広がりを与えています。まさにフォーク・ロック的なサウンドを狙ってチャレンジしていることが感じられます。

ところで一瞬映ったリックが左手にしていたのはペンキ・ローラー。低音部に厚みを加えるためでしょうか。 地元のダンスバンドで活動していた時には、ハモンド・オルガンの上に乗ってほうきブラシで“演奏”したりしていたリックなので、それがヒントになってペンキ・ローラーを思いついたのかもしれませんね。

ちなみにこのペンキ・ローラーは、Strawbsにリックが加入して間もない、まだ無名の頃からやっていたことのようです。キース・エマーソンのナイフみたいな感じでしょうか。

2013年3月2日土曜日

「Mr. 9 'till 5 and Alta Loma Five till Nine 1975」PFM



イタリアのPFMがTV番組Old Grey Whistle Testで行なった1975年のスタジオ・ライヴで、「Mr. 9'till 5」から「Alta Loma Five till Nine」メドレー。

[members]
Franz Di Cioccio(ドラムス、パーカッション、ボーカル)
Patrick Djivas(ベース)
Franco Mussida(ギター、ボーカル)
Mauro Pagani(フルート、バイオリン)
Flavio Premoli(キーボード、ボーカル)

 
Bernardo Lanzetti(リード・ボーカル)が加入する前のメンバーで、テクニカルな演奏はまさに絶頂期。「Mr. 9'till 5」は1972年の2nd「Per Un Amico」の「Generale!」をオリジナルとする曲。その冒頭部分を少し演奏した後に、ライヴアルバム「Cook」収録の「Alta Loma Five till Nine」になだれ込みます。もちろんロッシーニの「ウィリアム・テル序曲」入り。

マウロ・パガーニのバイオリンの素晴らしさに圧倒される一曲。しかしムッシーダのギターもプレモリのキーボードも尋常じゃないプレイ。テクニカルなのに情感がこもっているのが凄いですね。そしてチョッチョのドラムスも冒頭から凄まじい切れを見せます。

この、非情にテクニカルだけれども〝ドライヴ〟している感じや〝歌っている〟感じが、昨今のテクニカルなプログ・メタルにはない、大きな魅力と言えるでしょう。

唖然としてしまう一糸乱れぬアンサンブル。ジャズロック・インスト・ナンバーの傑作でしょう。 PFMはやっぱり孤高の存在ですね。