2020年7月15日水曜日

「A Plague of Lighthouse Keepers - Live, Belgian TV, 1972」ヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレーター(Van der Graaf Generator)


現在もトリオで精力的に活動しているVan der Graaf Generatorの1972年ベルギーTVのスタジオ・ライヴ。曲は1971年発表の傑作「Pawn Hearts」に収録された23分を越える大作メドレー「A Plague Of Lighthouse Keepers」です。


[members]
Peter Hammill (ボーカル、ピアノ、ギター)
Hugh Banton(オルガン、ベース)
David Jackson(サックス、フルート)
Guy Evans(ドラムス、パーカッション)  
  

この「Pawn Hearts」は、完成後にバンドが一旦活動停止してしまうくらい全精力を注ぎ込んだ作品。ロバート・フリップ(Robert Fripp)もギターで少しだけ参加していますが、 それすら消し飛んでしまうくらいバンドのヒリヒリするような緊張感が全編を貫く凄まじい内容です。

なんと言ってもピーター・ハミルの情念を叩き付けるようなボーカルが強烈ですが、教会のオルガンを感じさせつつ今よりかなり実験的な音を出すヒュー・バントンも、タメのあるリズムで突進してくるガイ・エヴァンスも、もちろん唯一立って演奏しているサックス2本同時プレイが得意技のデイヴィッド・ジャクソンも、皆十分な存在感を発揮しています。

Peter Hammillのボーカルだけでなく、ギターもベースもいないという特異な編成でHugh Bantonがベースペダルで低音を支えているというのも、バンドの音に通常のバンドにはない緊張感を与えているように思います。 

序盤に映し出されるキャンドル以外は実に素っ気ないスタジオで、バンドの使用楽器もシンプルそのものですが、とにかく混沌としたパワーに圧倒される演奏です。


2020年7月3日金曜日

「Live 1980」バンコ・デル・ムッツォ・ソッコルソ(Banco Del Mutuo Soccorso)


イタリアのバンドバンコ・デル・ムッツォ・ソッコルソ(Banco Del Mutuo Soccorso)がRAI(イタリア国営放送)で1980年に行ったTVライブ映像。
   
  
[members]
Francesco Di Giacomo:ボーカル 
Vittorio Nocenzi:シンセサイザー、キーボード
Gianni Nocenzi:ピアノ、キーボード
Rodolfo Maltese:ギター、トランペット
Pierluigi Calderoni:ドラムス、パーカッション
Gianni Colajacomo:ベース
Karl Potter:パーカッション

[set list](曲/収録アルバム)
1. Di Terra /「... Di Terra」(1978)
2. Garofano Rosso  /「Garofano Rosso」(1976)
3. E Mi Viene Da Pensare  /「Canto di primavera」(1979)
4. R.I.P.  /Banco del Mutuo Soccorso」(1972)
5. Interno Città  /「Canto di primavera」(1979)
6. Capolinea  /「Capolinea」(1979)
7. Il Ragno  /「Come in un'ultima cena」(1976)
8. Non Mi Rompete  /「Io Sono Nato Libero」(1973)
9. Circobanda  /「Canto di primavera」(1979)
  

1970年代初期には、暑苦しいほどに構築されたノチェンツィ兄弟のツイン・キーボードとフランチェスコ・ディ・ジャコモのカンツォーネ的な熱唱ボーカルで、強烈なアルバムを次々と発表したバンコ・デル・ムッツォ・ソッコルソですが、その後のディスコやパンクなどのムーブメントを経て、少しポップさが増した1980年のライブです。

全編、隙きのないアンサンブルで、各楽器の見せ場もあって、見ごたえのあるライブですね。やはりピアノが大活躍し、カンツォーネ歌唱がボーカルを取るロックは非常に個性的ですが、ここではギターやポリシンセが全面に出てハモンドオルガンが使われないといったところに、時代を感じさせる変化が見て取れます。その分、初期に比べサウンドよりも音の厚みと多彩さが増したようです。
  
プログレ度的には、初期の名曲「R.I.P.」が気になりますが、やはり時代を反映して、攻撃的なロック色は薄れて、リズミカルでポップなアレンジになっています。それでも、変拍子でもノリノリな演奏は見事ですね。叙情性も失われていません。

それでも旧曲の別アレンジよりも、当時の曲の方が自然な印象を与えるのは仕方ないところ。そうしたサウンドの変化には好き嫌いはあるでしょうが、バンドとしての充実期であったことを物語る貴重な映像記録であることは、間違いないでしょう。