2013年10月21日月曜日

「At the Isle of Wight Festival 1970」グレイシャス

 
イギリスのバンドGraciousが、伝説の1970年「ワイト島音楽祭」に出演した際のライヴ映像。

曲は2nd「This is... Gracious!!」(1972)収録の大作組曲「Super Nova」。ただしオリジナルは20分を軽く越える曲ですが、ここではメロトロンの不調により途中で演奏を断念しています。

[members]
Paul "Sandy" Davis(リード・ボーカル、12弦ギター)
Alan Cowderoy(ギター、バッキング・ボーカル)
Martin Kitcat(キーボード、バッキング・ボーカル)
Tim Wheatley(ベース、バッキング・ボーカル)
Robert Lipson(ドラムス)

[set list]
Super Nova
 a) Arrival of The Traveller
 b) Blood Red Sun
 c) Say Goodbye to Love
 d) Prepare to Meet Thy Maker(メロトロンの不調で演奏されず)

Graciousは1967年結成、1970年にデビューアルバム「Gracious」を発表し、その翌年の1971年には解散してしまった短命なバンドです。

1972年に2nd「This is... Gracious!!」が発表されますが、これはもともと「Supernova」というタイトルでバンドがまだ活動していた1971年に完成していたもの。しかしコマーシャルではないということでレコード会社(ヴァーティゴ)はリリースしようとしなかったという曰く付きの作品。バンド解散後に「This is...」という廉価版シリーズの一枚としてフィリップスから発売されたので、このタイトルになったのだそうです。

ハードロックっぽい骨太なサウンドに、ポールの男っぽいボーカル、そしてマーティン・キットカットの奏でるメロトロンが一体となり、イギリスの香り高いサウンドが展開されます。ハード・ロックのキーボードと言えばハモンド・オルガンが当たり前だった当時に、メロトロンをキーボードのメインに据えたところが一つの大きな魅力ですね。

後半「Say Goodby to Love」が終る辺りでマーティンがポールのところに駆け寄って耳打ちすると、ポールが曲の終了をアナウンス。「メロトロンが動かなくなったんだ」と観衆に説明していますが、発電機のパワーが落ちてメロトロンのピッチが不安定になってしまったようです。

そのメロトロンもなだめすかしつつなんとか鳴らしながら、次の曲「Once on a Windy Day」が始まったところで映像は切れてしまいます。アンコールでは「C.B.S.」が演奏されたようなので、この日の演目は3曲。ぜひ完全版映像が見たいところです。

この日は「Super Nova」初演だったそうで、メロトロンがダウンしたライヴ記録というアクシデントも含めて、非常に貴重な映像だと言えるでしょう。

2013年10月17日木曜日

「Frippertoronics Demo 1979」ロバート・フリップ



1974年にKing Crimsonが解散した後、Frippertronics(フリッパートロニクス)という新しいシステムを開発してソロ活動を始めたロバート・フリップ(Robert Fripp)が、1979年にアメリカのTV番組「Midnight Special」に出演しFrippertronicsのデモンストレーションを行なった際の映像。

Frippertronicsとはアナログテープでプレイバックさせたギターに、更にギターを重ねて行く手法。二つのオープンーリール・テープ・レコーダーをループさせ、一台で演奏を録音しもう一台でタイミングをずらして再生させ、そこにまたリアルタイムに音を被せていくというもので、ソロ・ギターながら重層的な音世界を作り上げることができます。

こうした手法自体は、すでにブライアン・イーノ(Brian Eno)との共作「No Pussyfooting」(1973)の頃から見られましたが、当時はオーバーダヴなどによって表現していたもので、テープを使ったこのようなシステムは1975年のイーノとのヨーロッパ・ツアーからだそうです。

Frippertronicsという言葉は、こうしたシステムをインプロヴィゼーション主体のソロ・パフォーマンスで用いるようになってから、そのパフォーマンス全体を指して使われ始めたようですね。

この映像では「Starless and Bible Black」(1974)収録の「The Night Watch」を彷彿とさせる流麗で美しいギターソロを聴くことが出来ます。ディレイ・サウンドの特徴が活かされた、次々に打ち寄せるさざ波の音を聴くような穏やかで瞑想的な音世界ですね。

ちなみにFrippertronicsという造語は、当時の彼の恋人であった詩人Joanna Waltonによって命名されたものだとか。

1990年代になると機材のデジタル化が進み、Frippertronicsはより自由度と表現力を増したSoundscapeへと受け継がれていくことになります。


2013年10月12日土曜日

「The Old Grey Whistle Test 1978」ナショナル・ヘルス



イギリスのカンタベリー派ジャズ・ロックバンドNational Healthが、1979年に音楽番組「The Old Grey Whistle Test」に出演した際のスタジオライヴ映像。

曲は2nd「Of Queues And Cures」(1978)から「The Collapso」。

[members]
Phil Miller(ギター)
Dave Stewart(キーボード)
John Greaves(ベース、ボーカル)
Pip Pyle(ドラムス)

National Healthはフィル、デイヴ、ピップの三人が元Hatfield and the Northという編成からHatfield and the Northの発展系、あるいは一つの完成形と呼べるような音楽性を持つバンド。強烈なフロントマンを中心とするバンドではなく、個性豊かなメンバーの絶妙なアンサンブルが魅力です。

1stアルバム「National Health」(1978)ではゲスト参加のアマンダ・パーソンズ(Amanda Parsons)によるソプラノ・ボーカルが大きな特徴になっていましたが、2ndアルバムでは参加しておらず、ニール・マーレイ(Neil Murray)に替わって加入したジョン・グリーヴスの存在感が増したサウンドになっています。

相変わらずフィルのギターにデイヴのキーボードは個性豊かな音色で聴かせますが、このライヴステージでもニールは、ファズ・ベースを唸らせながら、流れるようなバンドの音にダイナミズムを加えていますね。

実はこのライヴ収録時、本番まで長く待たされたメンバーたちはお酒を飲みながら待っていたためかなり酔っぱらった状態だったそうです。ちょっとラフな感じのニールの様子を見るとそれも納得。

でも全体のアンサンブルに見える冷静さや朴訥さはしっかり発揮されていて、決してフュージョンにならない彼ら独特のジャズ・ロックサウンドを聴くことが出来ます。

デイヴ・スチュアートは、Bruford加入直前の時期にあたります。