2013年10月10日木曜日

「The Old Grey Whistle Test 1973」ピート・シンフィールド



King Crimsonのデビュー作「In the Court of the Crimson King」(1969)から「Islands」(1971)までの歌詞を担当したPete Sinfield。彼は1972年にバンドを離れますが、その後EL&Pが設立したマンティコア・レーベルからソロアルバム「Still」(1973)を発表します。これはその1973年にイギリスの音楽番組「Old Grey Whistle Test」に出演した際のスタジオライヴ映像。

曲は「Still」から「The Song of the Sea Goat」。

ビバルディ(Antonio Lucio Vivaldi)の「ギター協奏曲二長調の第2楽章」をモチーフにしたもので、アルバム「Still」の冒頭を飾る曲。バロックらしいゆったりとした典雅な雰囲気に重ねられたボーカル・メロディーは、どことなく「クリムゾン・キングの宮殿」風。

メンバーにMel Collins(フルート、サックス)、John Wetton(ベース)が加わっているのが見て取れますが、残念ながらドラムス、ギター&キーボード、ピアノの3人のメンバーが誰なのかは確認できませんでした。

ボーカリストとして聴くとどうしても拙さを感じてしまいますが、singingというよりpoetry readingに近いと見方を変えると、彼の誠実さとか夢想的な繊細さがより感じられるように思います。バックの演奏は言わばその詩的世界を広げるBGMなのかもしれません。

2013年10月7日月曜日

「Top of the Pops 1972」ホークウインド



英国サイケデリック/スペース・ロックの最高峰Hawkwindが、シングル専用曲「Silver Machine」が大ヒットした1972年に、BBCの「Top of the Pops」に“出演”した際のライヴ映像。

[members]
Dave Brock(ギター、ボーカル)
Nik Turner(サックス、フルート)
Lemmy Ian Kilmister (ベース、ボーカル)
Dik Mik (Michael Davies) (シンセサイザー)
Del Dettmar(シンセサイザー)
Simon King(ドラムス)

UKシングル・チャート第3位という大ヒットによりBBCの音楽チャート番組「Top of the Pops」に出演することになったのですが、必ずしもファンと言うわけではないスタジオの観客の前で演奏することを良しとしなかったメンバーは、1972年7月のライヴ映像にシングル音源を被せるという方法で番組に“出演”することになったのだとか。

シンセサイザーの電子音やイコライズされたフルートの音が飛び交いますが、曲は意外とシンプルでストレートなロックンロール。でもHawkwindが演奏すると一定の反復リズムが強調された非常にトリップ感の強い曲になってしまうから不思議です。

ロバート・カルバート(Robert Calvert)のボーカルが弱かったために、最終的にベースのレミー・キルミスターがボーカルを担当したという曰く付きの曲ですが、力強くもちょっと荒っぽいレミーの歌い方は、Hawkwindのサイケデリック・サウンドに良くあっていたと言えるでしょう。

1971年からステージ・ダンサーとして加わったステイシア(Stacia)の姿が映っているのも貴重でしょう。“ヌード・ダンサー”として加わっていたわけですが、この時は着衣&フェイス・ベインティングというTV放送にも支障のない格好をしていますね。

「Live on French TV 1970」マグマ



フランスの巨星Magmaが、1st「Kobaïa」(1970)発表時に行なったと思われるTV番組でのスタジオライヴ映像。

曲は「Kobaïa」収録の「Stoah」。

[members]
Christian Vander(ドラムス、パーカッション、ボーカル)
Klaus Blasquiz(リード・ボーカル)
Claude Engel  (ギター、フルート、ボーカル)
Francis MozeMOZE(ベース、コントラバス)
Francois Cahen(ピアノ)
Teddy Lasry(ソプラノ・サックス、フルート)
Richard Raux(アルト&テナー・サックス)
Alain Charlery(トランペット)

クリスチャン・バンデを中心に1969年に結成されたMagmaは、初期にはブラス・セクションを率いたジャズロック・バンド的な編成でした。

3管のブラス・セクションとピアノがビッグバンド・ジャズ風な雰囲気を残していますが、冒頭の奇怪なアジテーションやオペラチッックなボーカル、そしてフリージャズっぽい展開など、この曲はすでにMagmaらしいオリジナリティーに満ちていますね。

ジャズ・ロックと言うにはあまりにヘヴィーでアンダーグラウンド。それはまるで呪術的秘密結社か異端宗教の地下集会の様子を撮ったもののようで、整然とした高度なアンサンブルが、逆に狂気に近い不気味さを感じさせてくれます。

互いが見えるような形で円形に並ぶメンバーの様子からも、“儀式”や“共同体”と言った言葉が浮かんできます。そこには既存音楽へのアンチとかいったことなど眼中になく、ただ自分たちにとってあるべき音楽を創造しようとする、尋常ならざる意志のようなものが漂っています。

ピアノとフルートが全面に出る部分などは、この次期特有と言えるもので、Magmaの映像としても非常に貴重なものと言えるでしょう。