2013年8月30日金曜日

「Hakone Aphrodite 1971」ピンク・フロイド



Pink Floydが1971年8月に初来日し、野外音楽フェスティバル「箱根アフロディーテ」に出演した際のTV映像。テレビ埼玉の「サウンド スーパーシティ」で放映されたものです。

曲は「Atom Heart Mother」(1970)から「Atom Heat Mother」抜粋。

[members]
David Gilmour(ギター、ボーカル)
Nick Mason(ドラムス)
Roger Waters(ベース、ボーカル)
Richard Wright(キーボード、ボーカル)

当時は「Atom Heart Mother」発売後で、「Meddle」発売直前という時期(10/30発売)。ステージでは「Atom Heart Mother」を皮切りに5曲を演奏し、その「Meddle」からも未発表曲だった「Echoes」をお披露目してくれたのでした。

音楽とはリンクしていない演奏風景に来日時の様々なオフ・ショットを組み合わせたものなので、ライヴ映像と言うよりは来日記録映像と言った趣きですね。

演奏の様子を味わうという点では物足りなさがありますが、1971年にPink Floydが来日したというとんでもない事実を記録した貴重な映像と言えるでしょう。

演奏に耳を傾けると、4人による「Atom Heart Mother」が、アルバムとはまた違った魅力に溢れていることが分かります。力強いベースと、荒々しいドラムス、サイケデリックなギター、幻想的なスキャット、そして崇高なハモンドの音。こんな演奏を霧立ち込める屋外で聴けたというのは羨ましい限りです。

尚メンバー名でNick Masonが“Nicki Mason”になっているのはご愛嬌。
  

2013年8月29日木曜日

「Live in Helsinki 1976」ウィグワム



フィンランドのバンドWigwamが、1976年にヘルシンキのLiisankadun Studioで行なった、TV放送用スタジオ・ライヴ映像。

[members]
Jim Pembroke(ボーカル、エレクトリック・ピアノ)
Pedro Hietanen(キーボード)
Pekka Rechardt (ギター)
Måns Groundstroem(ベース)
Ronnie Österberg(ドラムス、パーカッション)

[set list]
1. Eddie And The Boys
2. Simple Human Kindness
3. Colossus
4. A Better Hold (And A Little View)
5. Grass For Blades

Wigwamはボーカルのジム・ペンブロークによって1969年に結成されたバンド。ジャズ・ロックにポップ・テイストを加えた“プログレッシヴ・ポップ”とでも言うべきオリジナルなサウンドが魅力で、「Being」(1973)という傑作を生み出しています。

1976年というとアルバム「The Lucky Golden Stripes And Starpose 」(1976)を出した頃。それまでペンブロークと共に中心的存在だったJukka Gustavson(ボーカル、キーボード)とPekka Pohjola(ベース)が脱退し、“新生Wigwam”としてイギリスのVirginレーベルから「Nuclear Nightclub」(1975)を出した後で、次第にメロディアスさに磨きがかかって行く時期にあたります。

そんな時期でありながらも、このライヴでは「The Lucky Golden Stripes And Starpose 」から6分を越える大作「Colossus」や、「Live Music from the Twilight Zone」(1975)収録の10分を越える「Grass for Blades」など、プログレッシヴなテイストも十分味わうことが出来るのが嬉しいところ。

タイトなリズム、ジム・ペンブロークの渋いボーカル、そして一人立ってプレイしているペッカ・レチャードの表現力豊かなギターがとても良いですね。

2013年8月28日水曜日

「Hits A Go Go 1968」ザ・ナイス



キース・エマーソンがEmerson Lake & Palmer以前に組んでいたキーボード・トリオThe Niceが、1968年にスイスのTV番組「Hits A Go Go」に出演した際の映像。

曲はバーンスタイン(Leonard Bernstein)作「ウエスト・サイド物語(West Side Story)」の曲をアレンジした「America」。この曲は1968年にシングル・リリースされたものです。

[members]
Keith Emerson(キーボード)
Lee Jackson(ベース)
Brian Davison(ドラムス)
David O'List(ギター)

“キーボード・トリオ”と書きましたが、そもそもはギターを含めた4人編成で、女性ソウル・シンガーのP.P.アーノルドのバックバンドとしてスタート。その後バンドは独立し、1967年にシングル・デビュー、翌1968年に「The Thought of EMERLIST DAVJACK」でアルバムデビューを果たします。

2ndアルバム「Ars Longa Vita Brevis」(1968)制作中にデヴィッド・オリストが脱退し、キーボード・トリオで再スタートを切ることになるのですが、この映像はまだデヴィッド・オリストが在籍していた時点でのもので、非常に珍しい4人編成のThe Niceを見ることができます。

とは言っても、すでにキース・エマーソンの技量と存在感は抜きん出ています。ギターの出る幕もないわけではないのですが霞みがち、その後のデヴィッド・オリスト脱退もむべなるかなという感じですね。

最後のインタビュー場面で「なぜナイフを刺すのか?」と聞かれたキースが答えます。

「理由は二つ。一つは(ナイフ二本を刺すことで)プレイしている間中、二つの音をずっと出し続けることが出来るから。そうすれば演奏中でもそれだけより多くの音を鳴らすことができるんだ。もう一つは、(ナイフが)大統領が射殺されたりするような、アメリカという国の殺人や暴力をちょっと象徴しているんだよ。」

その後EL&Pにも引き継がれるこのナイフ・パフォーマンスにも、当初には「America」という曲に呼応した政治的・社会的な意味が込められていたというのは面白いですね(後付けかもしれませんが)。

2013年8月25日日曜日

「Live in Japan 1978」ジェネシス



イギリスのスーパーバンドGenesisが、1978年に初来日した際の厚生年金会館でのステージを記録した映像。当時「ジェネシス ライブ イン ジャパン 光と音のスーパーショー」としてテレビ放映されたものです。

[members]
Phil Collins(ボーカル、ドラムス)
Mike Rutherford(ベース、ギター)
Tony Banks(キーボード)

[tour support members]
Chester Thompson(ドラムス)
Daryl Stuermer(ギター、ベース)

Genesis初来日は、1978年3月からスタートした「... And There were Three ...(そして3人が残った)」(1978)ツアーのラストを飾るもの。もともとライヴの出来不出来のないバンドではありますが、それでも見事なアンサンブルによる力のこもった演奏です。

残念ながら当日のセットリストの最初の曲と最後のクライマックス部分の継ぎはぎなのでコンサートの全貌には程遠いものですが(なんと「... And There were Three ...」からは一曲も入っていない)、画質やカメラワークの悪さ(引きの絵がとても多い)にもかかわらず、圧倒的な演奏と熱気が伝わってきますね。

スティーヴ・ハケット(Steve Hackett)が抜けた穴を、このツアーではダリル・ステューマーが勤めています。ジャン・リュック・ポンティ(Jean-Luc Ponty)の傑作「Enigmatic Ocean(秘なる海)」(1977)で、アラン・ホールズワース(Alan Holdsworth)と共にポンティとバトルを繰り広げたギタリストです。

繊細なビブラートでスティーヴのサウンドを再現していますが、もともとはジャズ/フュージョン畑の人なので、スティーヴよりある意味安定した力強い演奏を聴くことができます。

何と言っても新生Genesisを印象づけたのは、フロントマンになったフィル・コリンズのショーマンシップぶり。ピーター・ゲイブリエル(Peter Gabriel)の時のようなミステリアス&グロテスクな演出とは異なり、コミカルな動きを見せつつ観客を惹き付けます。それはGenesisが持っていた幻想性とはベクトルの違うもので、その後のサウンドの変化も納得のステージングだと言えます。

映像では最後の最後に「アリガートー」という声が聞けますが、コンサートではMC担当のフィルが曲紹介を日本語で行なっていて、それがまたかなり面白かったようです。

日本語タイトルや曲紹介字幕なども味わい深いものがありますね。

2013年8月24日土曜日

「Live in 2008」内核の波



2010年の解散が惜しまれる、日本が誇るヘヴィー・シンフォ・ロック・バンド、内核の輪(ないかくのわ)のライヴ映像。2008年に行なった結成10周年記念ワンマンライヴのものと思われます。ちなみにバンドの英語名はNaikaku(Internal Nuclear Tide)。

曲は2ndアルバム「殻(Shell)」(2006)から「殻(Shell)」。

[members]
小林智(ベース、図画工作、映像)
鈴木和美(フルート)
村岡満男(ギター、トランペット)
吉田真悟(ドラムス)

guest
高木大地(キーボード、食:from 金属恵比須)

技巧に走りがちかファンタジーに自己陶酔しがちな昨今のプログレバンドの中で、全編インストながら、合い言葉「ロックだぜ!」に象徴されるような、あくまでロックの熱さを持っていた希有な日本のバンドが内核の波です。

まず緩急を使い分けつつ次々と展開しながら17分近演奏を聞かせる力量が素晴らしいです。そうした大曲であるにもかかわらず、“ロック”さを感じさせるのは吉田の6弦ベースと村岡のギターが叩き付けるダークで重いリフ。リズム・セクションは鉄壁。特に吉田のテクニカルながらタメの効いたドラミングはバンドの大きな魅力になっています。

邪悪系ヘヴィー・ロックなグルーヴに、鈴木和美の横笛を思わせる幽玄なフルートの音という組み合わせが、日本的情緒を感じさせてくれるのも大きな魅力で、海外で評価が高かったのもうなずけるオリジナリティーのあるサウンド。


メトロトン的サウンドから実験的なシンセ音まで操る、金属恵比寿からの助っ人高木のモダンなキーボード・プレーも良いですね。ちなみに彼が担当する「食」というのは、ステージ上で牛丼などを食すというパフォーマンス。

   

「Rockpalast 1978」グローブシュニット(Grobschnitt)



ドイツのシンフォニック・ロック・バンドGrobschnittが独TVの音楽番組「Rockpalast」に出演した際の、Gekürzte Fassungでのコンサート映像です。

曲は「
Ballermann」(1974)から「Solar Music」。

[members]
Wildschwein (Stefan Danielak):ボーカル、ギター
Eroc (Joachim H. Ehrig) :ドラムス、シンセサイザー、ボーカル
Lupo (Gerd Kühn) :リード・ギター、ボーカル
Popo (Wolfgang Jäger) :ベース
Mist (Volker Kahrs) :キーボード、ボーカル
*表記は、ニックネーム(実名)

1972年のオドロオドロしいデビュー作「Grobschnitt」から、次第にメロディアスなシンフォニック・ロックへと変化し、「Jumbo」(1975)を経て「Rockpommel's Land」(1977)で頂点に達した彼らのステージ。非常に安定した演奏が聴けます。

「Solar Music」は2nd「Ballermann」(1974)に収録された33分に渡る組曲。「Solar Music Live」(1978)では、この曲のみ単独でライヴアルバム化されています。

演劇的要素も取込みながら、一見不気味な雰囲気かと思いきや意外とコミカルな演出。ボーカルのヴィルドシュヴァインのハスキー&ワイルドな声が強烈ですが、演奏は非常にオーソドックスでシンフォニックなもの。丁寧で温かみのあるプレイが良いですね。

子どものように楽しそうなエロックのドラミングは実は結構パワフルで、メロディアスな曲に重量感を与えているのが分かります。

ルポのギターとミストのキーボードが端正に音を重ねていくと、ゆったりした流れの中に幻想的な世界が広がります。

2013年8月22日木曜日

「Live 1978」ノヴァリス



ドイツのシンフォニック・ロック・バンドNovalisによる1978年のライヴで、WDR(西ドイツ放送局)による映像。

曲は「Novalis(銀河飛行)」(1975)から「Wer Schmetterlinge lachen hört」。

[members]
Detlef Job(ギター、ボーカル)
Heino Schünzel(ベース、ボーカル)
Lutz Rahn(キーボード)
Fred Mühlböck(リード・ボーカル、フルート、ギター)
Hartwig Biereichel(ドラムス、パーカッション)

大傑作「Sommerabend」(1976)発表後に、オーストリア出身のフリート・ミュルベックが専任ボーカリストとして加入し、ライヴでも彼がフロントマンとしてボーカルのみならずフルートでも活躍するようになります。

サウンドも洗練されアンサンブルにも磨きがかかっていく時期。ラッツ・ルーンのキーボードの音色も多彩になっています。力強いボーカリストが加入したこともあって、「Sommerabend」までの素朴さ繊細さよりポップさやキャッチーさ、そして力強さが全面に出てきた印象ですが、独特の繊細さやロマンティシズムは健在です。

決してテクニックで勝負するタイプのバンドではありませんが、非常に安定感のある演奏も素晴らしいものがありますね。

2013年8月19日月曜日

「Diplodocus Club, Genève 1975」ピュルサー(パルサー)



フランスのプログレッシヴ・ロック・バンドPulsarが、1975年11月にジュネーヴのDiplodocus Clubで行なったライヴの映像。

曲は1st「Pollen」(1975)から「Puzzle / Omen」。オリジナルは女性のモノローグ(英語)入りの8分に渡る大曲ですが、モノローグだけテープで流しながらのリアル・ライヴだと思われます。

[members]
Victor Bosch(ドラムス)
Michel Masson(ベース)
Gilbert Gandil(ギター、ボーカル)
Roland Richard(フルート、キーボード)

フランスにはGenesis、King Crimsonの影響を受けたバンドが多い気がしますが、このPulsarはPink Floydのスペイシーなサウンドからの影響が伺える珍しいバンド。しかし物憂いフルートや冷たいキーボードの音が作り出す世界は、より内省的・幻想的なオリジナルの魅力に溢れています。

1stアルバムでベース&ボーカルを担当していたPhilippe Romanはすでに脱退し、次作「Strands of the Future」(1976)からアルバムにクレジットされるミッシェル・メイソンがベースを弾いているようです。

全アルバムに参加しているキーボード専任奏者のジャック・ローマン(Jacques Roman)がこのライヴには参加していないようですが、ローラン・リシャールがフルートとキーボードを兼任し、アルバムではシンセサイザーが奏でるメロディーをフルートで演奏したりと活躍しています。


幻想的でありながら“ファンタジック”にならないのは、ジルベール・ガンディルのダークで力強いなファズ・ギターや、ヴィクトール・ボッシュの多彩でタイトなドラミングによるものでしょう。異次元空間を漂うような雰囲気は特にこの1stが強く、そんなアルバムの音が見事に再現されていますね。

しかしまさかPulsarの映像が残っているとは思っていませんでしたので、見つけた時には正直震えました。非常に貴重な映像と言えるでしょう。

尚、バンド名の発音は当初英語読みで“パルサー”と表記されていましたが、後にフランス語読みの“ピュルサー”が一般的となりました。

 

2013年8月17日土曜日

「Live in Japan 1993」シルヴィアン & フリップ




元Japanのデヴィッド・シルヴィアン(David Sylvian)とKing Crimsonのロバート・フリップ(Robert Fripp)が、1993年10月に東京の中野サンプラザで行ったライヴ。

曲はトップを飾った「God's Monkey」。

[members]
David Sylvian(ボーカル、ギター、キーボード)
Robert Fripp(ギター)
Michael Brook(ギター)
Trey Gunn(ウォー・タッチ・ギター、ボーカル)
Pat Mastelotto(ドラムス)

「Alchemy - An Index Of Possibilities」(1985)からデヴィッド・シルヴィアンのアルバムにフリップが参加するかたちで始まったコラボレーションですが、「Gone To Earth」(1986)を経て正式にSylvian & Frippとして「The First Day」(1993)を制作、同年10月に来日することになります。

アルバム制作時のメンバーであるジェリー・マロッタ(Jerry Marotta)は、ピーター・ゲイブリエル(Peter Gabriel)ツアーに同行したため、パット・マステロットがドラムスで参加しています。

1995年に「Thrak」で劇的にシーンに戻って来たKing Crimsonですが、この1993年当時は「Discipline」(1981)で復活したKing Crimsonも「Three of a Perfect Pair」(1984)を最後に活動を停止しすでに10年近くが経ち、次のCrimson復活についてあれこれ噂されていた頃です。Frippがこうしたかたちで元気なところを見せてくれたことが嬉しかった記憶があります。このままKing Crimsonになるのではというウワサもありました。

演奏はCrimsonを彷彿とさせるダークでヘヴィーなもの。パット・マステロットの重いビートが良い雰囲気を醸し出しています。もちろんフリップのギターの切れ味も素晴らしいもの。もう「この音が聴きたかったんだ!」と叫びたい程。
 
ウォー・ギターで低音部分を引き受けるトレイ・ガンも、オリジナルの“Infinite Guitar”を操るマイケル・ブルックスも、素晴らしいアンサンブルを作り上げていて、バンドとしての一体感を感じさせてくれます。

もちろんシルヴィアンのボーカルの存在感は抜群で、インストのCrimson色に見事に拮抗して、両者が溶け合ったようなサウンドを作り上げていますね。


ちなみに「Damage」(1994)というライヴ・アルバムはありますが、このライヴ映像はVHSビデオで発売されただけで、未だにDVD化されていないもの。フリップの「Exposure」のライヴ演奏が含まれていることも含めて、非常に貴重な映像記録と言えるでしょう。

2013年8月12日月曜日

「In the Dead of Night 1978」U.K.


イギリスのバンドU.K.(ユーケー)によるPV。曲は1stアルバム「U.K.」収録の「In the Dead of Night」。

[members]
John Wetton(ベース、ボーカル)
Allan Holdsworth(ギター)
Eddie Jobson(キーボード、エレクトリック・バイオリン)
Bill Bruford(ドラムス、パーカッション)

1978年というとKing Crimsonはすでに解散し、プログレッシヴ・ロック・シーンにも翳りが見えていた頃、当時このバンド結成を耳にしてかなり興奮したことを覚えています。

元King Crimsonのジョン・ウェットンとビル・ブルーフォードが参加するということで、基本的にKing Crimsonの後継的なバンドになるのかな…でもロバート・フリップ(Robert Fripp)とは明らかにタイプの異なる、ジャズ・ロック畑出身のアラン・ホールズワースを迎えるということだから、インスト部分はかなりテクニカルでジャズロック的になるんだろうか…そしてKing Crimsonにはいなかったキーボード奏者が入るのか…それも若くて溌剌としたエディ・ジョブソンというのは、見た目的にも今までに無い雰囲気だなぁ…

期待と妄想は大きく膨らんだものでした。そしてアルバム最初のこの曲を聴いた時の衝撃は忘れることができません。

7拍子で進むのにノリが良く耳に心地良いリズム、ジョンの勢いのあるボーカル、そこに変則的にスネアを入れるいかにもビルらしいドラミング、そしてエディの歯切れの良い目の覚めるようなデジタル・キーボードの音。もちろん中間部で聴けるアランのギター・ソロも魅力満点。全員がきちんと持ち味を出した上で、それらがうまく融合され、ジャズロックではなく今までに無いワクワクするようなプログレサウンドを作り出してくれたのでした。

U.K.の持つ、複雑さと分かり易さとカッコ良さとノリの良さの絶妙なバランスは、今でも唯一無二と言えるでしょう。映像はいわゆる口パク&当て振りですが、この4人が一緒にステージに立っている映像があるだけでも貴重だと言えるでしょう。

2013年8月11日日曜日

「Sight and Sound in Concert 1978」コロシアムII



イギリスのジャズロック・バンドColosseum IIが、1978年ロンドンのヴィクトリア・ハウスで行なったライヴを、BBCの音楽番組「Sight and Sound in Concert」で放送したフルコンサート映像。

[members]
Gary Moore (ギター、ボーカル)
Don Airey (キーボード)
Jon Hiseman(ドラムス)
John Mole(ベース)

[set list]
1. Fighting Talk 
2. The Inquisition 
3. Rivers 
4. Desperado 
5. The Scorch 

Colosseumの名前を冠しながらも、Colosseumとはかなり趣の違ったテクニカル・フュージョン・サウンドを特徴とするColosseum II。ColosseumからTempestを経て、ジョン・ハイズマンが中心となって1974年に結成されたバンドです。

Colosseumからのメンバーはドラムスのジョン・ハイズマンだけですが、彼のドラミングは相変わらず安定感抜群の素晴らしいもの。ただColosseum IIではColosseumのジャズ色は後退し、ゲイリー・ムーアとドン・エイリーの二人が自由にプレイするボトムを支えている感じです。

そしてその二人はソロに掛け合いにと縦横無尽に活躍します。基本的にはインスト・バンドですが、MCにボーカルまで担当するゲイリーの存在感が大きいですね。

アンサンブルも聴き応え十分で、特に「The Inquisition」におけるドンやジョン・モールとの高速ユニゾンは素晴らしく、中間部のアコースティック・ギターも含めてアル・ディメオラかという弾き倒しぶり。

1978年というと3rd「War Dance」(1977)発表後で、まさにColosseum IIサウンドが完成したと言って良い時期。超絶アンサンブルに加え、「Rivers」ではゲイリーのボーカル、「Desperado」ではジョンのベース・ソロ、「The Scorch」ではドンのキーボード・ソロと、見せ場も用意されています。

充実のライヴ・ステージ映像なので、ラストが突然切れてしまうのが非常に残念です。

この後間もなくゲイリーはThin Lizzyに、ドンもRainbow(Ritchie Blackmore's Rainbow)に加入し、Colosseum IIはバンドは活動を終えることになります。

2013年8月9日金曜日

「musica planeadora 1981」アシュラ



ドイツのロックバンドAshra(1971〜1975年まではAsh Ra Tempel)が、スペインの番組「Music Express」で、“music planeadora”というコズミック/アンビエント・ロックの回に出演した際のライヴ映像です。

演奏されているのはリリースされていない未発表曲とのこと。あるいはジャムセッション的な即興演奏だったのかもしれません。

[members]
Manuel Göttsching(ギター)
Harald Grosskopf(ドラムス)
Lutz Ulbrich(ギター、キーボード)

マニュエル・ゲッチングを中心に1971年に結成されたアシュラ・テンペル(Ash Ra Tempel)は、オリジナル・メンバーにドラマーとしてクラウス・シュルツェ(Klaus Schulze)が参加していたことでも有名なバンド。

当初はドラッギーなサイケデリック・ジャム・バンドでしたが、1976年にバンド名をアシュラ(Ashra)に変え、ヴァージンに移籍したあたりから、アンビエント、ハウス、テクノ、ニューエイジ的な作風に変化しました。


1980年代後半にアンビエント・ハウス/テクノ・ハウスの波とともに、このミニマル&アンビエントなサウンドが再評価され現在に至っています。

この映像が撮られた1981年は、「New Age Of Earth」(1976)「Blackouts」(1977)「Correlations」(1979)「Belle Alliance」(1980)と、ヴァージンからの作品が立て続けにリリースされた後であり、またソロアルバムとして傑作「E2-E4」(1984)を発表する前、つまり非常に充実した時期にあたります。

ゲッチングの美しくも音響的なギター、ハロルド・グロスコフの繊細なシンバルワーク、ラッツ・ウルブリッヒの目の前に空間が広がっていくようなシンセサイザーが織り成す、仕掛け無しのリアルライヴなサウンドは美しいの一言ですね。

2013年8月7日水曜日

「Akihabara Goodman 2008」是巨人



日本が誇るアヴァンギャルド・ジャズロック・バンド是巨人(Korekyojin)が、2008年に秋葉原GOODMANで行なったライヴ映像。

曲はアルバム「ツンドラ(TUNDRA)」(2011)に収録されることになる「Swan Dive」。

[members]
Nasuno Mitsuri:ナスノミツル(ベース)
Yoshida Tatsuya:吉田達也(ドラムス)
Kido Natsuki:鬼怒無月(ギター)

是巨人は1995年に結成され活動休止を挟みながら、現在に至るまでその圧倒的な演奏力と複雑怪奇な変拍子で、日本を始め海外でも多くのファンを獲得してきているインスト・バンドです。

多方面で活躍する吉田達也の流れるようでいて実に正確で多彩なドラミングが文句なく素晴らしいですが、メタルではなくハードロックな音でバリバリ弾き倒す鬼怒無月の自信に満ちた轟音も、テクニカルでありつつ重いナスノミツルの高速ベースも、とにかく全員が強烈な存在感に満ちていますね。

何より三人の持つ正確なリズム感が素晴らしく、この複雑なノリの曲に微塵のズレも乱れも感じさせないことが驚異的です。そしてこの摩訶不思議なアンサンブルがロックの熱さを伴いつつ、淀みなく続いていくことの心地良さ…。

This HeatとGentle Giantから取った名前(This Giant = 是巨人)からも、このバンドの変拍子&アヴァンギャルドサウンド、そしてロックへのこだわりが伺えますが、結果的に唯一無二な音を作り出している、日本を代表するバンドの一つだと言えましょう。

「Kyrie 1973」ボボル・ヴー



ドイツの実験的瞑想音楽を奏でるバンドPopol Vuhのライヴ映像。ドキュメンタリー番組のような感じですが所出は不明。

曲は3rdアルバム「Hosianna Mantra」(1972)収録の「Kyrie」。


[members]

Florian Fricke(ピアノ)
Djong Yun(ボーカル)
Conny Veit(ギター、パーカッション)
Klaus Wiese(タンブーラ)
Robert Eliscu(オーボエ)

リーダーのフローリアン・フリッケは電子音楽では先駆的なジャーマン・ロックバンドの中でも非常に早い段階からシンセサイザーを用いていて、その中古をかのクラウス・シュルツェ(Klaus Schulze)が使うことになるというほどであったとか。

しかしシンセサイザーを使った作品は初期の二作に留まって、傑作と言われるこの3rdアルバム「Hosiana Mantra」では、いっさいシンセサイザーの使用を止めアコースティクでアンビエントなサウンドに大転換します。

サウンド的にはいわゆるリズム・セクションがいないのが特徴。音のバランス的にもボトムが空いているので、独特の浮遊感がありますね。

韓国系ボーカリスト、ジョン・ユンの声も美しく、フリッケのピアノや今作から加入したコニー・ファイトのエコーがたっぷりかかったギターが、宗教的/瞑想的な世界を描いていきます。

Popol Vuhもフローリアン・フリッケ自身も、当時はライヴを行なわなかったようなので、こうした映像が残っていることは実に貴重だと言えるでしょう。ただし音はアルバムのものを使っているようです。

ちなみに“Popol Vuh”とは、グァテマラ高地のマヤ系先住民に伝わる起源神話/歴史伝承の書のことで、その場合日本語では「ポポル・ヴフ」と記述されるのが一般的。若きフリッケがミュンヘン大学図書館でこの書と出会ったのが、バンド誕生のきっかけと言われています。



2013年8月4日日曜日

「Live on Spanish TV 1978」ゴティック



スペインのジャズ・ロックバンドGoticが、1978年にスペインのTV番組で行なったスタジオライヴ映像。

曲は、正規発売には至らなかった幻の2ndアルバム「Maqueta」(1978)から、「Juventut Audac」。

[members] 
Rafael Escoté(ベース)
Jordi Martí(ドラムス、パーカッション)
Jordi Vilaprinyó(キーボード)
Eugeni Gil(ギター)

 
唯一作「Escenes」(1978)で実質的なフロントマンとして大活躍していたフルート&ピッコロ担当のペプ・ヌイス(Jep Nuix)が脱退した後と思われ、サウンド的には1stとかなり印象の違ったものになっています。

1stでは軽やかで透明感のあるフルートを中心とした、テクニカルでシンフォニックなアンサンブルが魅力で、Camel、PFM、Kenso、ミスター・シリウスなどが引き合いに出されそうなロマンチックな音でした。

一転してこのライヴでは、軽やかでクールな音は1stに通ずるものがありまが、ジャズ的なノリが出ていたりエレクトリック・ピアノが全面に出ていたりと、リターン・トゥ・フォーエバーなどのフュージョン/ジャズ・ロック・サウンドに近づいた感じです。


幻の2ndアルバム「Maqueta」に収録されている同曲では新メンバーAgusti Brugadaのフルートも活躍し、1stの延長にある音として聴くことが出来ます。この「Maqueta」は一時海賊版としてCD-Rで流通していたようですが、ぜひ正規発売をして欲しいものです。

フルーティスト抜きのこのメンバーでもテクニカルなアンサンブルの安定感は抜群なので、ぜひアルバムを出して欲しかったと思います。と同時にフルート奏者がいるかいないかでこれほど雰囲気が変わってしまうことを思うと、1st 「Escenes」がどれだけ絶妙なバランスの上に出来上がったものなのかを、実感させられる映像だとも言えるでしょう。

2013年8月3日土曜日

「Toccata Live 1973」エクセプション



オランダのクラシカル・ロックバンドEkseptionが、1973年にTV番組で行なったスタジオライヴ。

曲は「Trinity」(1973)からJ.S.バッハの曲「トッカータとフーガ ニ短調」のロック・アレンジ曲「Toccata」。

[members]
Rein van den Broek(トランペット、フリューゲルホーン)
Jan Vennik(ソプラノ&テナーサックス、フルート)
Cor Dekker(ベース)
Pieter Voogt(ドラムス、パーカッション)
Rick van der Linden(キーボード)
 

オランダ屈指のキーボード・トリオTraceを結成する前に、リック・ヴァン・ダー・リンデンが在籍したバンドとして有名ですが、オランダ本国では商業的にも成功した有名なバンドでした。

彼らの特徴はキーボード・トリオ&管楽器という特異な編成にあります。しかしそのサウンドは斬新というわけではなく、リックのクラシカルなバックグラウンドを活かした、有名なクラシック曲のロック・アレンジ版がメインで、そこに人数の割に大人しいブラス・セクションが加わるというものです。

正直なところロック、あるいはプログレッシヴ・ロック的には、刺激が足りないかと思われる品行方正な音ですが、逆にロックという当時の新しいリズムを取り入れたクラシック曲という、新しいイージーリスニング”だったと捉えれば、広く受入れられたことも納得です。

しかしそんな彼らの音楽が時を経て、ダンスフロアに通用するファンキー&スウィンギーなインスト・ロックとして、DJにも高く評価されるようになるとは!

サウンドの要は確かにリックが握っているのですが、今聴くと彼のハープシコードやメロトロンにブラスという組み合わせに、スカスカしたチープさに加えて妙に明るいごった煮感があって、確かにキッチュな魅力に溢れていると言えそうです。

2013年8月1日木曜日

「TV Show 1982」アール・ゾイ



フランスの暗黒チェンバー・ロック・バンドArt Zoydが、TV番組で行なったスタジオライヴ映像。非常にレアで貴重な記録と言えましょう。ちなみに冒頭の“歓声”はオリジナルの音にもあった効果音で、観客の声ではありません。
 
曲は1982年に2枚組で発表された4thアルバム「Phase IV」収録の「Etat d'Urgence」。このためこの映像も1982年頃のものと思われます。

[members]
Thierry Zaboitzeff(ベース、チェロ、ボーカル)
Gerard Hourbette(バイオリン、ヴィオラ)
Didier Pietton(サックス)
Thierry Willems(ピアノ、キーボード)
Jean-Pierre Soarez(トランペット、コルネット)
 
Art Zoydは1969年にフランスで結成されましたが、後の中心人物であるベースのティエリ・ザボイツェフはまだメンバーではありませんでした。その後1971年にティエリが参加、1976年に「Symphonie pour le jour où brûleront les cités」でデビューします。

1970年代後半にはHenry Cow主催のRIO(Rock In Opposition:反体制ロック)運動に参加し、そのレーベルRecommended Recordsからアルバムを出すようになります。このため“レコメン系”のバンドなどと呼ばれたりもしますね。

1980年前半と言うとバンド的には、1stの再録などを行いつつシンセサイザーなどの電子楽器を導入する次の段階へ進む前の、それまでの音楽性を完成させようとしている時期と言えるでしょう。

ティエリ・ザボイツェフの力強いベース&ボーカル、ジェラール・ウルベットの繊細なバイオリン、テ​ィ​エ​リ​ー​・​ウ​ィ​レ​ムの荒々しくも美しいピアノ、そして脅迫的な管楽器による、じわじわと迫って来るアンサンブルが強烈です。

Magmaの臭いもそこはかとなく感じさせつつ、Magmaが動ならArt Zoydは静。まさに室内楽(chamber music)的な佇まいの中に、暗黒世界を見せてくれるような音楽ですね。